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神経科学
カルシウムで樹状突起を剪定する
Neuroscience
Pruning Dendrites with Calcium
Sci. Signal., 25 June 2013
Vol. 6, Issue 281, p. ec142
[DOI: 10.1126/scisignal.2004441]
Annalisa M. VanHook
Science, AAAS, Washington, DC 20005, USA
T. Kanamori, M. I. Kanai, Y. Dairyo, K.-i. Yasunaga, R. K. Morikawa, K. Emoto, Compartmentalized calcium transients trigger dendrite pruning in Drosophila sensory neurons. Science 340, 1475–1478 (2013). [Abstract] [Full Text]
神経発生では、高度に分岐した樹状突起ツリーが生じた後、選択的な剪定が施され、適切な結合性が確立される。Kanamoriらは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)蛹において、感覚ニューロンサブセットの成熟過程における剪定の前に、特定の樹状突起に局在する一過性のカルシウム(Ca2+)波が発生することを報告する。著者らは、無処置の蛹において、蛍光Ca2+指示薬を用いてCa2+濃度の変化を視覚化し、樹状突起の切断および断片化の前に、軸索や細胞体ではなく、樹状突起グループでCa2+トランジェントを観察した。異なる樹状突起グループ間ではCa2+波は調節されておらず、Ca2+トランジェントの出現と同じ時間順で樹状突起が剪定された。つまり、もっとも早いCa2+トランジェントを有する樹状突起が最初に剪定され、後にCa2+波を開始させた樹状突起が続いて剪定を受けた。Ca2+トランジェントの形成は、剪定前の樹状突起の興奮性亢進と相関し、Ca2+流入と効率的な剪定には電位開口型Ca2+チャネル(VGCC)が必要であった。正常な剪定には、Ca2+活性化プロテアーゼカルパインが必要であった。VGCCβサブユニット、カルパインA、またはカルパインBをコードする遺伝子の機能喪失変異がそれぞれヘテロ接合性である動物は、正常な剪定を示したが、三重ヘテロ接合体では剪定の障害が観察された。したがって、樹状突起の興奮性の局所的な亢進により、カルパインの区分化された活性化を通して樹状突起の消滅を開始させるCa2+トランジェントが産生されると著者らは提唱している。
A. M. VanHook, Pruning Dendrites with Calcium. Sci. Signal. 6, ec142 (2013).