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がん
入り混じったメッセージを届ける

Cancer
Delivering a Mixed Message

Editor's Choice

Sci. Signal., 9 July 2013
Vol. 6, Issue 283, p. ec152
[DOI: 10.1126/scisignal.2004488]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

C. M. Ghajar, H. Peinado, H. Mori, I. R. Matei, K. J. Evason, H. Brazier, D. Almeida, A. Koller, K. A. Hajjar, D. Y. R. Stainier, E. I. Chen, D. Lyden, M. J. Bissell, The perivascular niche regulates breast tumour dormancy. Nat. Cell Biol. 15, 807–817 (2013). [PubMed]

S. M. Weis, D. A. Cheresh, A wake-up call for hibernating tumour cells. Nat. Cell Biol. 15, 721–723 (2013). [PubMed]

がんにおいて、脈管構造と腫瘍の相互作用を研究する際の重点は、腫瘍に栄養と酸素を供給するための血管新生を刺激する腫瘍細胞の能力に置かれてきた。Ghajarらは、二次腫瘍部位において、血管内皮細胞(EC)が腫瘍細胞にシグナルを送ることを示している。安定した微小血管沿いにあるECは、腫瘍細胞を静止状態のまま維持するシグナルを出し、新生血管の発芽している先端部にあるECは、腫瘍細胞の増殖を刺激するシグナルを出した。転移性乳がんのマウスモデルの解析では、静止状態にある腫瘍細胞(Ki67陰性)は、乳がんがよく転移する部位である肺と脊髄の微小血管内皮と接触して存在することが示された。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とともに骨髄または肺の間質細胞を再現した人工的な3次元(3-D)微小血管培養系では、乳がん細胞は、発芽を亢進された血管および微小血管の先端部と一緒に培養プレートに蒔かれた場合や間質細胞に接触した場合に比べて、安定した微小血管との接触がある場合には、増殖が低下した。少数の微小血管先端部とともに培養された成熟EC由来または多数の発芽している先端部とともに培養された成熟EC由来の脱細胞化された細胞外基質(ECM)のプロテオミクス解析では、安定した培養由来ECMには、乳がん細胞転移の阻害因子であるトロンボスポンジン1(TSP-1)が濃縮されていること、また、発芽中の先端部との培養由来のECMには、より大量のペリオスチンが含まれ、形質転換増殖因子–β(TGF-β)を隔離するタンパク質の量が減少していたことが明らかになった。3-D微小血管培養において、TSP-1を間質の培養に加えると、乳がんの腫瘍細胞面積が減少し、がん細胞とECのECMとの相互作用を遮断するために抗体を加えると、腫瘍細胞面積は増加した。肺様微小血管系での乳がん細胞培養にペリオスチンと活性型TGF-β1を加えると、腫瘍面積は増加した。このように、腫瘍細胞が原発部位を離れ、脈管構造を通って移動する際には、TSP-1濃度の高いECMを持った安定した血管との相互作用が静止状態を引き起こすきっかけになっているのかもしれない。そして、血管の発芽を引き起こす条件がECMの変化を引き起こし、その周辺の静止状態にある腫瘍細胞に増殖を刺激するシグナルを提供することによって、がん再発をもたらすかもしれない。WeisとChereshによる解説では、このような事象がin vivoで生じるかどうか、また、他の種類の腫瘍にも関連するかどうか、という疑問が提起されている。

N. R. Gough, Delivering a Mixed Message. Sci. Signal. 6, ec152 (2013).

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2013年7月9日号

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入り混じったメッセージを届ける

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