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発生生物学
AlkはGliの活性を制御する
Developmental Biology
Alk Regulates Gli Activity
Sci. Signal., 23 July 2013
Vol. 6, Issue 285, p. ec166
[DOI: 10.1126/scisignal.2004535]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
D. Popichenko, F. Hugosson, C. Sjögren, M. Dogru, Y. Yamazaki, G. Wolfstetter, C. Schönherr, M. Fallah, B. Hallberg, H. Nguyen, R. H. Palmer, Jeb/Alk signalling regulates the Lame duck GLI family transcription factor in the Drosophila visceral mesoderm. Development 140, 3156–3166 (2013). [Abstract] [Full Text]
Gli転写因子の活性は、ヘッジホッグシグナル伝達によって制御されているが、Popichenkoらは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)Gliファミリー転写因子Lame duck(Lmd)の活性が、細胞外シグナル制御プロテインキナーゼ(ERK)経路を通して伝達される受容体チロシンキナーゼ未分化リンパ腫キナーゼ(Alk)からのシグナル伝達により阻害されることを報告している。ハエ胚の内臓中胚葉では、創始細胞(FC)と融合能のある筋芽細胞(fusion-competent myoblast:FCM)が互いに融合し、筋管を形成する。lmdはFCとFCMのどちらにおいても発現されるが、Lmdタンパク質はFCMに限局し、FCMの特異化に必要とされた。alk変異体では、FCは存在せず、すべての内臓中胚葉細胞中にLmdが存在した。AlkのリガンドJelly belly(Jeb)をコードする遺伝子の異所性発現により内臓中胚葉全体でAlkシグナル伝達が活性化されると、すべての細胞がFCマーカーを発現し、ERKの活性化を示したが、LmdおよびFCMマーカーは消失していた。jeb過剰発現に応答した内臓中胚葉細胞からのLmd消失にはユビキチンリガーゼMib2が必要であったことから、LmdはFC細胞でユビキチンを介した分解を受けるかもしれないことが示唆された。ヒト胚性腎(HEK)293細胞において、蛍光タグ付加Lmdは、Alkシグナル伝達が活性化されると細胞質に局在し、細胞をAlk阻害薬で処理すると核に局在した。生細胞イメージングから、Alk阻害薬を除去するとLmdが徐々に細胞質に再局在化することが明らかになった。マイトジェン活性化または細胞外シグナル制御プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)の阻害薬により処理すると、タグ付加LmdのAlkに依存する再局在化が阻害された。ハエ胚およびヒト胚性腎(HEK)293細胞における実験から、Alk依存性の再局在化にはLmdのN末端部分が必要であることが示され、質量分析から、Alkシグナル伝達が、このN末端領域においていくつかのアミノ酸のリン酸化を誘発することが明らかになった。これらの結果から、ERK経路を通したAlkシグナル伝達が、Lmdのリン酸化、その核からの除外、細胞質での分解を促進すること、すなわちLmdによるFCMに特異的な遺伝子の発現促進を阻害することにより、FCとしての性質を保持させるというモデルが示唆される。
A. M. VanHook, Alk Regulates Gli Activity. Sci. Signal. 6, ec166 (2013).