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神経変性疾患
アルツハイマー病におけるIgG受容体

Neurodegenerative Disease
IgG Receptors in Alzheimer’s Disease

Editor's Choice

Sci. Signal., 30 July 2013
Vol. 6, Issue 286, p. ec173
[DOI: 10.1126/scisignal.2004547]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T.-I. Kam, S. Song, Y. Gwon, H. Park, J.-J. Yan, I. Im, J.-W. Choi, T.-Y. Choi, J. Kim, D.-K. Song, T. Takai, Y.-C. Kim, K.-S. Kim, S.-Y. Choi, S. Choi, W. L. Klein, J. Yuan, Y.-K. Jung, FcγRIIb mediates amyloid-β neurotoxicity and memory impairment in Alzheimer’s disease. J. Clin. Invest. 123, 2791–2802 (2013). [PubMed]

アルツハイマー病(AD)の病理学的特徴は、脳内のβアミロイド(Aβ)の毒性蓄積に関連する。Kamらは、細胞、ADモデルマウス、ヒトAD脳組織を用いて、IgG Fcγ受容体IIb(FcγRIIb)が、ニューロンにおけるAβの毒性を仲介することを見出した。コントロールと比較して、成体ADモデルマウスの脳と、ヒトAD脳組織の海馬においては、FcγRIIbの存在量が増加し、FcγRIIbが内因性Aβとin situで共局在した(さらにホモジネートにおいて共沈した)。ヒトSH-SY5Y神経芽腫細胞と、野生型マウス皮質ニューロンにおいては、AβによってFcγRIIbのmRNA量およびタンパク質量が増加し、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)とその標的である転写因子c-Jun(FCGR2Bを転写的に活性化させることが知られる)が活性化されたが、Fcgr2bノックアウトマウスの皮質ニューロンではそのような変化は認められなかった。in vitroでは、細胞由来Aβオリゴマーと合成Aβオリゴマーの両方が、固定化されたFcγRIIb外部ドメイン(ED)に結合し、SH-SY5Y細胞またはマウス皮質ニューロンをFcγRIIb-EDで処理すると、Aβ誘導性のJNK活性化とFcgr2b発現が阻害されたことから、FcγRIIbがAβの受容体として機能することが示唆された。さらに、薬理学的阻害によって、SH-SY5Y細胞におけるFcgr2bFcgr2bプロモーター結合レポーターのAβ誘導性の発現に、JNKが不可欠であることが明らかになり、FcγRIIbはJNKを活性化させ、受容体の存在量を増加させる正の転写フィードバックを誘発することが示唆された。野生型の皮質ニューロンでは、Aβオリゴマーによって、小胞体(ER)ストレス応答タンパク質の存在量も増加したが、Fcgr2bノックアウトマウスの皮質ニューロンでは、そのような増加は認められなかった。ERストレス応答タンパク質は、HT22ヒト海馬細胞において、FcγRIIbの過剰発現によっても増加し、Aβ誘導性の細胞死を伴った。ERストレス阻害薬salubrinalによって、野生型HT22細胞とFcγRIIbが過剰発現したHT22細胞において、Aβ誘導性の細胞死が阻止された。Fcgr2bノックアウトマウスから得られた海馬スライスと初代皮質および海馬ニューロンは、Aβによる神経毒性[細胞死と、長期増強(LTP)、シナプス安定性、棘突起密度の低下として現れる]に抵抗性を示した。ADモデルマウスにおいて、交雑によりFcgr2bをノックアウトすると、シナプス機能と記憶保持が回復した。Aβ-FcγRIIb間相互作用をいずれかのタンパク質の特定のアミノ酸で標的とする合成ペプチド(ドッキングシミュレーションにより予測)の投与により、初代マウス皮質および海馬ニューロンでは、Aβによる神経毒性が阻害され、ADモデルマウスでは、Aβ誘導性の記憶障害が抑制された。総合するとこれらのデータからは、Aβ-FcγRIIb間相互作用を標的にすることによって、アルツハイマー病のAβ病理が治療される可能性があることが示唆される。

L. K. Ferrarelli, IgG Receptors in Alzheimer’s Disease. Sci. Signal. 6, ec173 (2013).

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2013年7月30日号

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