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神経科学
強い心のための強い骨

Neuroscience
Strong Bones for a Strong Mind

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 October 2013
Vol. 6, Issue 295, p. ec234
[DOI: 10.1126/scisignal.2004766]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

F. Oury, L. Khrimian, C. A. Denny, A. Gardin, A. Chamouni, N. Goeden, Y.-y. Huang, H. Lee, P. Srinivas, X.-B. Gao, S. Suyama, T. Langer, J. J. Mann, T. L. Horvath, A. Bonnin, G. Karsenty, Maternal and offspring pools of osteocalcin influence brain development and functions. Cell 155, 228–241 (2013). [PubMed]

オステオカルシンは、骨芽細胞が分泌するホルモンであり、代謝および生殖能を含む多様な生理学的過程を制御する。Ouryらは、オステオカルシンがまた、抑うつを阻害し、学習と記憶を促進することを報告する。野生型の同腹仔ならびにオステオカルシンの代謝作用を媒介する受容体をコードするGprc6aを欠損したマウスと比較して、オステオカルシン欠損マウス(Ocn–/–マウス)は、移動運動の低下といくつかの神経伝達物質の存在量の変化を示した。具体的には、Ocn–/–マウスの脳では、γ-アミノ酪酸(GABA)量が減少し、セロトニン、ノルエピネフリン、およびドーパミンの量が増加しており、これらの各神経伝達物質の生合成に必要な遺伝子の発現が対応して変化していた。行動実験から、Ocn–/–マウスは、不安および抑うつの症状を示し、空間記憶検査における学習不能を示すことが明らかになったのに対し、Gprc6a–/–マウスは野生型マウスと同等の成績であった。in vivoで、オステオカルシンは、血液脳関門を通過し、脳の様々な部分のニューロンと結合した。脳切片にオステオカルシンを加えると、GABAの生合成に必要な遺伝子の発現が低下し、セロトニン、ドーパミン、およびノルエピネフリンの生合成に必要な遺伝子の発現が亢進した。Ocn–/–マウスにオステオカルシンを1週間脳室内投与すると、神経伝達物質生合成遺伝子の正常な発現が回復し、行動および学習障害が改善した。オステオカルシンは、出生後の正常な脳発達に必要であるのに加え、胎仔の脳発達のために母親にも必要であった。発達中の胚に存在する循環血液中のオステオカルシンの大部分は母親に由来するものであり、Ocn–/–の母親に由来する胚の脳には、形成異常、質量低下、および神経細胞アポトーシスの増加が認められた。Ocn–/–の母親から生まれたOcn–/–マウスの行動および学習表現型は、Ocn+/–の母親から生まれたOcn–/–マウスのものよりも重度であった。脳由来レプチンが骨量に影響を与えることが確立されており、今や、骨が脳の発達と機能に影響を与える可能性もあるようである。

A. M. VanHook, Strong Bones for a Strong Mind. Sci. Signal. 6, ec234 (2013).

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2013年10月1日号

Editor's Choice

神経科学
強い心のための強い骨

Research Article

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