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生理学
骨量低下を防ぐ
Physiology
Preventing Bone Loss
Sci. Signal., 15 October 2013
Vol. 6, Issue 297, p. ec247
[DOI: 10.1126/scisignal.2004804]
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
Y. Miyauchi, Y. Sato, T. Kobayashi, S. Yoshida, T. Mori, H. Kanagawa, E. Katsuyama, A. Fujie, W. Hao, K. Miyamoto, T. Tando, H. Morioka, M. Matsumoto, P. Chambon, R. S. Johnson, S. Kato, Y. Toyama, T. Miyamoto, HIF1α is required for osteoclast activation by estrogen deficiency in postmenopausal osteoporosis. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 16568–16573 (2013).[Abstract] [Full Text]
骨量は、骨形成を行う骨芽細胞と骨吸収を行う破骨細胞の相反する作用によって調節されている。骨量低下(骨粗鬆症)はエストロゲン欠乏によって生じ、閉経後の女性に多く見られる。Miyauchiらはマウス閉経後骨粗鬆症モデルを用いて、低酸素誘導因子1α(HIF1α)が骨吸収に重要であることを明らかにした。卵巣摘出マウスでは、対照群と比べて、エストロゲン産生が低く、後肢骨の低酸素領域に局在化する破骨細胞におけるHIF1αのタンパク質量が多かった。ただし、そのmRNA量は多くはなかった。野生型マウス由来破骨細胞初代培養をβ-エストラジオール(E2)で処理すると、低酸素状態、正常酸素状態のどちらでもHIF1αの転写に影響を及ぼすことなくHIF1α量が減少したが、破骨細胞特異的条件付きエストロゲン受容体α(ERα)ノックアウトマウス由来培養ではE2の影響はみられなかったことから、エストロゲンはERα依存的にHIF1αを不安定化すると考えられる。破骨細胞特異的なHIF1α条件付きノックアウトによって、卵巣摘出後の破骨細胞産生が阻害され、血清中CTx(骨吸収マーカー)が減少した。正常酸素培養下では、対照マウス由来骨髄培養と、HIF1αノックアウトマウス由来骨髄培養とで破骨細胞産生は同等であったが、低酸素状態では、HIF1αノックアウトマウス由来培養の方が対照と比べて、破骨細胞マーカーカテプシンKをコードするCtskの発現が低かった。E2処理によって対照細胞中のCtsk発現は減少したが、E2はHIF1αノックアウト細胞には影響を及ぼさなかったことから、HIF1αが低酸素誘導性骨量低下に重要であり、エストロゲンはHIF1αを不安定化することによって、これを防ぐことが示された。HIF1αはユビキチンプロテアソーム機構によって分解されるが、セリンまたはシステインプロテアーゼ、カルパイン、またはプロテアソームに対する阻害剤はE2誘導性HIF1α不安定化を阻害しなかったことから、このような不安定化は独特の機序を介して生じると考えられる。HIF1α転写後阻害剤2-メトキシエストラジオール(ERアゴニスト)を経口で処理したマウスは、非処理マウスと比べて卵巣摘出後の血清中CTxが低く、骨密度が高かった。これらの知見から、HIF1αは骨粗鬆症治療の有望な標的となると考えられる。
L. K. Ferrarelli, Preventing Bone Loss. Sci. Signal. 6, ec247 (2013).