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薬理学
マリファナによる高揚を消す

Pharmacology
Snuffing Out Marijuana Inflammation

Editor's Choice

Sci. Signal., 3 December 2013
Vol. 6, Issue 304, p. ec291
[DOI: 10.1126/scisignal.2004955]

Pharmacology
Snuffing Out Marijuana Inflammation

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Chen, J. Zhang, N. Fan, Z.-Q. Teng, Y. Wu, H. Yang, Y.-P. Tang, H. Sun, Y. Song, C. Chen, Δ9-THC-caused synaptic and memory impairments are mediated through COX-2 signaling. Cell 155, 1154–1165 (2013). [PubMed]

マリファナ(大麻)は、その薬理作用により数多くの文化で使用される。しかし、慢性的に使用すると、認知機能や記憶が障害される可能性がある。マリファナの活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)は、カンナビノイド受容体CB1RおよびCB2Rに結合し、Gタンパク質共役シグナル伝達を活性化させる。内因性カンナビノイド2-AGによってCBRが活性化されると、通常であればプロスタグランジン-E2(PGE2)などのプロスタノイドの産生を促進する炎症性酵素シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が阻害される。Chenらは、2-AGとは異なり、THCを急性投与すると、マウスの海馬においてCOX-2とPGE2の存在量が増加することを見出した。COX-2を増加させるTHCの能力にはCB1Rが必要であり、PGE2を増加させるTHCの能力にはCOX-2活性が必要であった。Gタンパク質サブユニットGβおよびGγに対するペプチド阻害剤である百日咳毒素のようなGタンパク質阻害剤、またはGβ1およびGγ2を標的とする低分子ヘアピン型RNAは、COX-2を増加させその他いくつかの下流標的の活性化を促進するTHCの能力を抑制した。Gαi1を標的とする低分子ヘアピン型RNAは、炎症によって誘導されるCOX-2活性を低下させる2-AGの能力を抑制したが、Gαi1、Gαi2、Gαi3を標的とする低分子ヘアピン型RNAは、THCを介するCOX-2量の増加に影響を及ぼさなかった。THCを反復投与したマウスにおいて、COX-2を薬理学的または遺伝的に阻害すると、海馬の長期増強、樹状細胞棘とシナプス形成、グルタミン酸恒常性の異常が消えるとともに、空間記憶、恐怖条件付け反応、移動運動の障害が抑制された。アルツハイマー病のマウスモデルでは、THCの反復投与によってアミロイドーシスと神経変性が軽減し、この効果は、COX-2阻害剤のセレコキシブによって変化しなかったことから、THCとCOX-2阻害剤を併用する治療には、マリファナの単独使用よりも高い臨床的有用性がある可能性が示唆された。

J. D. Berndt, Snuffing Out Marijuana Inflammation. Sci. Signal. 6, ec291 (2013).

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2013年12月3日号

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薬理学
マリファナによる高揚を消す

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