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代謝
肥満外科手術成功のシグナル
Metabolism
Signals of a Successful Bariatric Surgery
Sci. Signal., 13 May 2014
Vol. 7, Issue 325, p. ec124
[DOI: 10.1126/scisignal.2005468]
Nancy R. Gough
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
K. K. Ryan, V. Tremaroli, C. Clemmensen, P. Kovatcheva-Datchary, A. Myronovych, R. Karns, H. E. Wilson-Pérez, D. A. Sandoval, R. Kohli, F. Bäckhed, R. J. Seeley, FXR is a molecular target for the effects of vertical sleeve gastrectomy. Nature 509, 183–188 (2014). [PubMed]
胃の大きさを小さくする必要のある肥満患者のための外科手術手技である垂直袖状胃切除(VSG)は、II型糖尿病患者の薬物治療依存を迅速かつ効果的になくし、持続性の体重減少を導く。グルコース代謝の急速な変化は、食物摂取および栄養吸収の変化がVSG手術の効果の唯一のメディエーターではないことを示唆する。実際に、VSGを受けた患者あるいはマウスは、核内受容体ファルネシルX受容体(FXR)のリガンドである胆汁酸の循環量の増加を示した。Ryanらは、野生型およびFXRをノックアウト(KO)したマウスにVSGを行い、VSG後の体重および体脂肪の減少がFXR-KOマウスでは維持されないことを見いだした。野生型マウスでは、手術後の最初の3週間は食物摂取量が少なく、高脂肪食への嗜好性の低下が見られたが、FXR-KOマウスではどちらも見られなかった。FXR-KOマウスはまた、術後の耐糖性の改善を示さなかった。VSG後の野生型およびFXR-KOマウスの小腸におけるmRNAの存在量の違いに関するバイオインフォマティックス解析は、脂質および胆汁酸代謝に関わる経路における変化およびそれらが腸内細菌叢の変化に関連する可能性を明らかにした。この結果は、胆汁酸の腸内細菌叢調節能および腸内細菌叢の酵素活性を介した胆汁酸組成の調節能と合致した。野生型およびFXR-KOマウスの大腸由来試料の分析は、VSGが野生型マウスの腸内細菌叢に、より大きな総合効果を及ぼし、さらに体重増加の減少と関連した、あるいは、糖尿病と負に関連した腸内細菌叢の変化は、VSG後の野生型マウスにのみ起こることを示した。このように、FXRシグナル伝達および腸内細菌叢の変化はVSGによる短期および長期の有益な効果に重要であると考えられる。
N. R. Gough, Signals of a Successful Bariatric Surgery. Sci. Signal. 7, ec124 (2014).