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抗ウイルスシグナル伝達
一つで二つの抗ウイルス応答の抑制

Antiviral Signaling
Two-for-One Suppression of the Antiviral Response

Editor's Choice

Sci. Signal., 22 July 2014
Vol. 7, Issue 335, p. ec193
DOI: 10.1126/scisignal.2005712

Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. E. Davis, M. K. Wang, L. J. Rennick, F. Full, S. Gableske, A. W. Mesman, S. I. Gringhuis, T. B. H. Geijtenbeek, W. P. Duprex, M. U. Gack, Antagonism of the phosphatase PP1 by the measles virus V protein is required for innate immune escape of MDA5. Cell Host Microbe 16, 19-30 (2014). [PubMed]

A. W. Mesman, E. M. Zijlstra-Willems, T. M. Kaptein, R. L. de Swart, M. E. Davis, M. Ludlow, W. P. Duprex, M. U. Gack, S. I. Gringhuis, T. B. H. Geijtenbeek, Measles virus suppresses RIG-I-like receptor activation in dendritic cells via DC-SIGN-mediated inhibition of PP1 phosphatases. Cell Host Microbe 16, 31-42 (2014). [PubMed]

T. Seya, Measles virus takes a two-pronged attack on PP1. Cell Host Microbe 16, 1-2 (2014). [PubMed]

細胞質RIG-I様受容体(RLR)のRIG-IおよびMDA5は、麻疹ウイルスなどのRNAウイルスに対する自然免疫応答の重要な構成要素である。RIG-IのSer8およびThr170、MDA5のSer88の恒常的リン酸化は、非感染細胞においてこれらのRLRを不活性状態に維持する。これらのRLRがウイルスRNAに結合すると、プロテインホスファターゼ1のαおよびγアイソフォーム(PP1αおよびPP1γ)が抑制性のリン酸基を除去し、抗ウイルスシグナル伝達を可能にする。2つの研究により、麻疹ウイルスのVタンパク質(MV-V)がPP1によるRLRの脱リン酸化を阻害することにより抗ウイルス応答を抑える、異なる機構が報告された。培養上皮細胞を用いて、Davisらは、MV-Vが感染細胞の抽出液由来のPP1αおよびPP1γと免疫共沈降し、MDA5の抗ウイルスシグナル伝達の細胞内部位でPP1γと共局在することを見いだした。トランスフェクション細胞に発現させると、MV-VはPP1αおよびPP1γへの結合をMDA5と競合し、MDA5のSer88での脱リン酸化を減少させた。様々なホスファターゼ阻害剤を用いた実験により、細胞においてPP1αはMV-Vを脱リン酸化し、in vitroで精製PP1αはMV-Vを脱リン酸化することが示された。筆者らは、PP1への結合を媒介するMV-Vの領域を同定し、この領域がMDA5の脱リン酸化阻害に必要であることを示した。PP1に結合できないMV-Vの変異型(VΔtail)を持つウイルスは、抗ウイルス応答を抑制せず、野生型ウイルスと比べてウイルス複製が低下した。上皮細胞は標的ではないが、樹状細胞(DC)は麻疹ウイルス感染初期のin vivoでの標的である。MDA5は、野生型麻疹ウイルスに感染した初代ヒトDCにおいてリン酸化されたままであったが、VΔtailウイルスに感染したDCでは脱リン酸化されていた。これらの結果は、MV-VがPP1による脱リン酸化に関してMDA5と競合することにより抗ウイルス応答を阻害することを示唆する。関連した研究で、Mesmanらは、MV-Vがまた、初代ヒトDCにおいてPP1の触媒活性を阻害することによりRLRシグナル伝達を抑えることを報告した。これらの細胞におけるMV-Vによる抗ウイルス応答の抑制は、細胞表面レクチンDC-SIGNを必要とし、MV-VによるDC-SIGNの活性化はセリン-スレオニンキナーゼRaf-1を介したシグナル伝達を刺激した。抗体を用いた架橋によるDC-SIGNの活性化は、PP1によるRIG-IのSer8およびThr170、MDA5のSer88の脱リン酸化を阻害し、Raf-1の阻害はこの作用を妨げた。Raf-1は、PP1阻害因子I-1とPP1の結合を促進することによりPP1の活性を抑えた。RNA干渉によるI-1あるいはRaf-1のノックダウンは、麻疹ウイルス感染を低下させた。これらの結果から、MV-VがDC-SIGNを刺激することによりRLRに媒介される抗ウイルス応答を阻害し、Raf-1の活性化とPP1によるRIG-IおよびMDA5の活性化の阻害を導くことが示された。Seyaによる解説は、これらの発見が麻疹ウイルスおよび他のパラミクソウイルスによるin vivoでの抗ウイルス応答の抑制に関与すると考察した。

A. M. VanHook, Two-for-One Suppression of the Antiviral Response. Sci. Signal. 7, ec193 (2014).

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2014年7月22日号

Editor's Choice

抗ウイルスシグナル伝達
一つで二つの抗ウイルス応答の抑制

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