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がん免疫学
脳腫瘍はTGF-βを使って免疫細胞と戦う

Cancer Immunology
Brain Cancer Uses TGF-β to Battle Immune Cells

Editor's Choice

Sci. Signal., 26 August 2014
Vol. 7, Issue 340, p. ec226
DOI: 10.1126/scisignal.2005828

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Gate, M. Danielpour, J. Rodriguez Jr., G.-B. Kim, R. Levy, S. Bannykh, J. J. Breunig, S. M. Kaech, R. A. Flavell, T. Town, T-cell TGF-β signaling abrogation restricts medulloblastoma progression. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, E3458-E3466 (2014). [Abstract] [Full Text]

髄芽腫は、小脳の中または近くの後脳に生じる、もっとも一般的な小児脳腫瘍である。約30%の患者では、このがんはヘッジホッグ(HH)シグナル伝達の過剰活性化に起因する。小脳顆粒ニューロン前駆細胞で恒常的活性化型HH受容体スムーズンド(Smo)を過剰発現しているマウス(Neurod2-SmoA1マウス)は、髄芽腫を発症する。末梢がんと同様に、脳腫瘍は浸潤性T細胞を含むが、免疫応答は損なわれている。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、様々ながんによって分泌される免疫抑制性サイトカインである。TGF-βは、細胞障害性T細胞(TC)と、TC細胞の活性化を助けるヘルパーT細胞(TH)の分化を阻害し、TC細胞の活性化を抑制する制御性T細胞(Treg)の分化を促進する。Gateらは、ヒト髄芽腫サンプルでは、正常な脳や他の神経膠腫と比較して、TGF-βの存在量が増加しており、TGF-β受容体のサブユニットであるTGF-βRIIが陽性であるTreg細胞とTH細胞が含まれることを見出した。Neurod2-SmoA1マウスの分析から、同一遺伝子型で腫瘍のないマウスの後脳と比較して、腫瘍ではTGF-β存在量とTreg細胞数が増加していることが明らかになった。Neurod2-SmoA1マウスのT細胞においてTGF-βRIIのドミナントネガティブ(DN)型を発現させると、寿命が延長し、行動異常が改善し、腫瘍サイズが縮小した。加えて、腫瘍では、Treg細胞数が減少し、TC細胞数とその活性化が増大した。腫瘍から分離されたDN-TGF-βRIINeurod2-SmoA1マウスに由来するTC細胞は、腫瘍のない後脳から分離されたものと比較して、蛍光タグ付加外因性グランザイムB(TC細胞に通常見られる細胞障害性プロテアーゼ)を効果的に運搬し、共培養アッセイにおいてNeurod2-SmoA1マウスに由来する腫瘍細胞を効果的に殺した。養子細胞移入実験では、腫瘍を有さないものではなく、腫瘍を有するDN-TGF-βRIINeurod2-SmoA1マウスの脾臓から分離されたTC細胞は、遺伝的に免疫不全のNeurod2-SmoA1マウスの腫瘍に浸潤した。このように、HHに起因する髄芽腫のTGF-βは、TC細胞の浸潤および分化を抑制することで、免疫系からの回避を可能にした。

J. D. Berndt, Brain Cancer Uses TGF-β to Battle Immune Cells. Sci. Signal. 7, ec226 (2014).

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2014年8月26日号

Editor's Choice

がん免疫学
脳腫瘍はTGF-βを使って免疫細胞と戦う

Research Article

セマフォリン3AはグアノシントリホスファターゼRab5を活性化させて成長円錐の崩壊を促進し脳梁の軸索突起を形成する

ジアシルグリセロールキナーゼαは免疫シナプスでジアシルグリセロール蓄積を形成することでT細胞の極性を確立する

T細胞受容体の刺激はヤヌスキナーゼ1を標的とするマイクロRNA miR-17 の発現を誘導することによりIL-7受容体シグナル伝達を阻害する

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