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神経科学
恐れることはない、Notchがここにある
Neuroscience
No Fear, Notch Is Here
Sci. Signal., 2 September 2014
Vol. 7, Issue 341, p. ec235
DOI: 10.1126/scisignal.2005848
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
B. G. Dias, J. V. Goodman, R. Ahluwalia, A. E. Easton, R. Andero, K. J. Ressler, Amygdala-dependent fear memory consolidation via miR-34a and Notch signaling. Neuron 83, 906-918 (2014). [PubMed]
記憶は、ニューロンのシナプス結合の構造と機能の変化によって形成され、これらの変化は、遺伝子発現とタンパク質翻訳の両方の変化によって仲介される。Diasらは、マウスにおける恐怖記憶の固定には、Notchシグナル伝達経路の2つのタンパク質の存在量がマイクロRNA(miRNA)miR-34aを介して抑制される必要があることを見出した。マイクロアレイと定量的遺伝子発現解析によって、聴覚手がかりを軽いフットショックと関連付ける恐怖条件付けの直後に成体マウスの扁桃体においてもっとも増加しているmiRNAとして、miR-34aが同定された。miR-34aスポンジ配列を発現するウイルスを扁桃体基底外側核に注入し、miRNAに拮抗させてその活性を阻害すると、マウスの恐怖記憶の形成が妨げられた。バイオインフォマティクスによるパスウェイ解析によって、miR-34aの標的となるNotchシグナル伝達経路内のリガンドと受容体が同定された。miR-34aの過剰発現により、HEK293T(ヒト胚性腎293T)細胞において、Notch1 3′-非翻訳領域を含有するルシフェラーゼレポーターの発現が低下した。恐怖条件付け後、Notch1の転写物とNotch1リガンドをコードする転写物Jag1の存在量が低下した一方、もう一つのNotch受容体-リガンドペアをコードし、同じくmiR-34aの標的であると推定される、Notch2とDll1の存在量には変化がなかった。血液脳関門を通過するγ-セクレターゼ阻害薬の腹腔内投与によって、または扁桃体基底外側核への機能阻害Jag1抗体の頭蓋内注射によって、Notchシグナル伝達を遮断すると、恐怖条件付け後24時間に、聴覚合図に反応してすくむマウスの数が増加した。一方、扁桃体基底外側核にmiR-34aスポンジを注入する、または下流のNotchエフェクター転写因子Hes1を発現するレンチウイルス粒子を注入することによって、Notchシグナル伝達を活性化させると、聴覚合図に反応してすくむマウスの数が減少した。これらの結果から、Notchシグナル伝達を直接的に、またはmiR-34aの阻害を介して間接的に活性化させることが、心的外傷後ストレス障害などの、恐怖に関連した障害を患う人々に対する治療戦略となる可能性のあることが示唆される。
L. K. Ferrarelli, No Fear, Notch Is Here. Sci. Signal. 7, ec235 (2014).