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翻訳後修飾
ニトロシル化すべき場所を知る

Posttranslational Modifications
Knowing Where to S-Nitrosylate

Editor's Choice

Sci. Signal., 11 November 2014
Vol. 7, Issue 351, p. ec314
DOI: 10.1126/scisignal.aaa2540

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Jia, A. Arif, F. Terenzi, B. Willard, E. F. Plow, S. L. Hazen, P. L. Fox, Target-selective protein S-nitrosylation by sequence motif recognition. Cell 159, 623-634 (2014). [Online Journal]

要約 システイン残基における一酸化窒素(NO)によるタンパク質修飾は、S-ニトロシル化と呼ばれ、タンパク質の局在化、安定性、および機能を調節することができる可逆的な制御性イベントである。NOは反応性の高い分子であり、部位選択性がどのように媒介されるかは未解決の問題である。Jiaらは、酸化された低密度リポ蛋白質(LDLox)およびインターフェロン-γ(IFN-γ)に曝露した末梢血単核細胞(PBM)においてタンパク質の部位特異的なS-ニトロシル化を媒介するタンパク質複合体を同定した。PBMをLDLoxとIFN-γの両方(LDLox/IFN-γ)に曝露すると、どちらかの刺激単独の場合と異なり、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GADPH)のCys247におけるS-ニトロシル化が開始された。(他の2つの考えられる標的システインはセリンに変異した)。Cys247におけるGADPHのS-ニトロシル化は、GAIT翻訳リプレッサー複合体の構成要素との相互作用を抑制し、それにより、この複合体が不安定化し、活性が阻害された。iNOSノックアウトマウスの骨髄由来マクロファージでは、GADPHのS-ニトロシル化とGAIT機能の阻害が遮断された。iNOSを認識する抗体およびGAPDHを認識する抗体で免疫共沈降したLDLox/IFN-γ曝露PBMの質量分析から、ヘテロ二量体を形成するカルシウム結合タンパク質である炎症メディエーターS100A9およびS100A8が同定された。LDLox/IFN-γは、S100A8とS100A9をコードする遺伝子の発現に影響を与えることなく、iNOS、GAPDH、S100A8、およびS100A9の間の複合体形成を促進した。S100A9は、S-ニトロシル化酵素として機能し、in vitroでNOをGADPHへ転移した。LDLox単独では、iNOSと、S100A8/S100A9との相互作用が刺激され、それには、LDLoxが刺激するサイトゾルカルシウムの増加が必要であった。S100A9をノックダウンすると、iNOSと、GADPHあるいはS100A8との相互作用が抑制された。GADPHには、S-ニトロシル化される可能性のある3つのシステインがある。GADPHのC247S変異体を発現しているPBMは、LDLox/INF-γに応答してS-ニトロシル化GADPHを産生しなかったが、このGADPH変異体を発現しているS100A8ノックダウン細胞では産生されたことから、S100A8がCys247での部位特異的なS-ニトロシル化に必要であることが示唆された。プロテオミクス解析から、LDLox/INF-γに応答してS100A9に依存する様式でS-ニトロシル化される候補が〜100個同定され、うち5個が詳しく探究された。これらの候補における修飾されたシステイン周辺の配列分析と、GAPDHのCys247周辺の配列から、保存されたモチーフI/L-X-C-X-X-D/Eが同定された。最初の疎水性残基はS100A8によるモチーフ認識に必要であると考えられ、モチーフ末端の荷電残基はiNOSとS100A9による認識に必要であると考えられた。GAPDHのCys247のS-ニトロシル化は、ロイシンまたはグルタミン酸が変異された場合に阻害され、S100A8を欠乏させるとロイシン変異でのみ生じた。モエシンにおいて表面からアクセス可能なヘリックスモチーフの近くにこのモチーフを導入すると、組み換えモチーフのシステイン残基においてLDLox/INF-γにより刺激されるS-ニトロシル化が生じた。このように、S100A8は、iNOSにより産生されるNOがS100A9から標的タンパク質の適切なシステイン残基に運ばれるように、複合体を適切な位置に導くと考えられる。

N. R. Gough, Knowing Where to S-Nitrosylate. Sci. Signal. 7, ec314 (2014).

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2014年11月11日号

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Research Article

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