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がん
出先でのエキソソーム内のプロセシング
Cancer
Processing On-the-Go in Exosomes
Sci. Signal., 18 November 2014
Vol. 7, Issue 352, p. ec318
DOI: 10.1126/scisignal.aaa2956
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
S. A. Melo, H. Sugimoto, J. T. O'Connell, N. Kato, A. Villanueva, A. Vidal, L. Qiu, E. Vitkin, L. T. Perelman, C. A. Melo, A. Lucci, C. Ivan, G. A. Calin, R. Kalluri, Cancer exosomes perform cell-independent microRNA biogenesis and promote tumorigenesis. Cancer Cell 26, 707-721 (2014). [Online Journal]
要約 エキソソームは細胞から分泌される小胞で、種々の分子、タンパク質およびRNAを運ぶことができる。Meloらは、乳がん細胞のエキソソームにはmiRNA前駆体をプロセシングするタンパク質が含まれることを見いだした。無細胞・無血清の細胞培地中でインキュベートされたMDA-MB-231細胞(乳がん細胞株)からのエキソソームでは、成熟miRNAの存在量は経時的に増加し、miRNA前駆体(pre-miRNA)の存在量は減少していた。一方でMCF10A細胞(正常な乳腺上皮細胞株)からのエキソソームにおける含有量に変化はなく、がん細胞由来エキソソームでは活動的なmiRNAプロセシングが生じていることを示唆していた。乳がん患者の血清には健常ドナーの血清に比べ多量のエキソソームが含まれており、さらにがん患者のエキソソームは培養系において、miRNA前駆体/成熟miRNA比の同様の経時的な切り替えを示していた。MDA-MB-231細胞からのエキソソームは、miRNA生合成に関わるタンパク質(Dicer、Ago2、TRBP、RISCローディング複合体タンパク質)を含んでいたが、MCF10Aからのエキソソームにはこれらは含まれなかった。両細胞種におけるFlag標識Dicerまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)標識Ago2の発現から、DicerとAgo2はがん細胞のみでエキソソームに動員されることが示された。MCF10A細胞はMDA-MB-231細胞からのGFP標識エキソソームを取り込み、結果として乳がんに関連するMCF10Aトランスクリプトームの全般的な変化(PTENおよびHOXD10の発現の減少など)が生じていた。がん細胞由来エキソソームを添加して培養したMCF10A細胞は、細胞の生存性、増殖および培養中のコロニー形成が亢進していた。MDA-MB-231細胞からのエキソソームまたは乳がん患者の血清からのエキソソームと、MCF10A細胞を同時注射したとき、マウスの乳腺脂肪体内に腫瘍が形成された。これらの腫瘍を有するマウス、または患者の乳がん、卵巣がんまたは子宮内膜腫瘍の同所移植片を有するマウスの血清には、マウスではなくヒトのDicerタンパク質のみを運ぶエキソソームが含まれていた。これらの所見は、標的細胞においてmiRNAを介した悪性転換を促進する可能性がある機構および分子を、エキソソームが運んでいることを示唆している。
L. K. Ferrarelli, Processing On-the-Go in Exosomes. Sci. Signal. 7, ec318 (2014).