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生理学
先天性の肥満抵抗能

Physiology
An innate ability to resist obesity

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 March 2015
Vol. 8, Issue 368, p. ec59
DOI: 10.1126/scisignal.aab1141

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. R. Brestoff, B. S. Kim, S. A. Saenz, R. R. Stine, L. A. Monticelli, G. F. Sonnenberg, J. J. Thome, D. L. Farber, K. Lutfy, P. Seale, D. Artis, Group 2 innate lymphoid cells promote beiging of white adipose tissue and limit obesity. Nature 519, 242-246 (2015). [PubMed]

要約 全身性炎症は肥満および代謝性疾患と関連しており、種々の免疫細胞が脂肪組織の代謝活性に影響している。インターロイキン-33(IL-33)により誘導され、それが産生するサイトカインのサブセットにより他の自然リンパ球と識別されるグループ2自然リンパ球(ILC2)は、マウスにおいて肥満を制限すると考えられる。Brestoffらは、ILC2が、肥満および非肥満ヒトドナーの腹部皮下の白色脂肪組織(WAT)、並びに肥満および非肥満マウスの精巣上体のWATに存在するが、両動物種の非肥満個体からの検体中により多く存在することを見いだした。IL-33欠損マウスでは野生型の対照マウスに比べ、精巣上体と鼠径部のWAT貯蔵部位におけるILC2が少なかった。またIL-33欠損マウスは対照マウスに比べ、精巣上体と鼠径部のWATが多く、全体の体サイズおよび全身の脂肪蓄積が大きく、グルコース感受性が障害されていた。反対に、通常食で飼育した野生型マウスにIL-33を投与すると、精巣上体と鼠径部のWAT中のILC2存在量が増加し、全体の脂肪蓄積が低下した。高脂肪食を給餌した野生型マウスにIL-33を投与すると、精巣上体のWAT中のILC2存在量が増加し、肥満が減少し、グルコース感受性が改善した。IL33-/-マウスおよびILC2移植を受けたマウスにおける細胞形態並びに褐色脂肪とベージュ脂肪特異的マーカーUcp1の発現に基づくと、ILC2はIL-33依存性プロセスを介して、白色脂肪細胞から(白色脂肪細胞よりも代謝活性が高い)ベージュ脂肪細胞への変換を促進していた。トランスクリプトーム解析から、プロホルモンのプロセシングに関わるエンドペプチダーゼをコードする遺伝子の発現量、およびその標的であるプロエンケファリンA(Penk)をコードする遺伝子の発現量は、ILC2が他のサブタイプのILCに比べ多いことが示された。Penkはタンパク分解により処理され、メチオニン-エンケファリン(MetEnk)のようなオピオイド様ペプチドが産生される。マウスをMetEnkで処理するとベージュ脂肪の生成が促進され、野生型マウスでは鼠径部WATの量が減少した。また培養白色脂肪細胞へのMetEnkの添加は、Ucp1の発現も刺激した。このようにILC2は、脂肪蓄積性の白色脂肪細胞から代謝活性のある脂肪燃焼性のベージュ脂肪細胞への変換を促進するMetEnkを産生することで、肥満を制限している可能性がある。

A. M. VanHook, An innate ability to resist obesity. Sci. Signal. 8, ec59 (2015).

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2015年3月17日号

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