• ホーム
  • がん エキソソームが転移部位を準備する

がん
エキソソームが転移部位を準備する

Cancer
Exosomes prep the metastatic site

Editor's Choice

Sci. Signal., 9 June 2015
Vol. 8, Issue 380, p. ec150
DOI: 10.1126/scisignal.aac7366

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. Costa-Silva, N. M. Aiello, A. J. Ocean, S. Singh, H. Zhang, B. K. Thakur, A. Becker, A. Hoshino, M. T. Mark, H. Molina, J. Xiang, T. Zhang, T.-M. Theilen, G. García-Santos, C. Williams, Y. Ararso, Y. Huang, G. Rodrigues, T.-L. Shen, K. J. Labori, I. M. B. Lothe, E. H. Kure, J. Hernandez, A. Doussot, S. H. Ebbesen, P. M. Grandgenett, M. A. Hollingsworth, M. Jain, K. Mallya, S. K. Batra, W. R. Jarnagin, R. E. Schwartz, I. Matei, H. Peinado, B. Z. Stanger, J. Bromberg, D. Lyden, Pancreatic cancer exosomes initiate pre-metastatic niche formation in the liver. Nat. Cell Biol. 17, 816-826 (2015). [PubMed]

Y. Zhang, X.-F. Wang, A niche role for cancer exosomes in metastasis. Nat. Cell Biol. 17, 709-711 (2015). [PubMed]

エキソソームと呼ばれる細胞外小胞が、がんの進行などのさまざまな疾患の場面における細胞間連絡の重要なメディエーターとして知られるようになっている(ZhangとWangを参照)。Costa-Silvaらは、膵管腺がん(PDAC)細胞から分泌されるエキソソームが、肝臓を転移コロニー形成に向けて準備するタンパク質を保有することを見出した。野生型マウスにおいて、脾臓に注入されたmCherryを発現するマウスPDAC細胞のうち、肝臓にコロニーを形成した数は、PDAC由来のエキソソームを前もって眼に注入されたマウスのほうが、正常膵組織由来のエキソソームを注入されたマウスよりも多かった。エキソソームを蛍光マーカーでタグ付けしたところ、クッパー細胞と呼ばれる特化した肝常在性マクロファージが、PDAC由来エキソソームを特異的に取り込むが、クッパー細胞も、解析を行った他の組織の細胞も、正常膵組織に由来するエキソソームは取り込まないことが明らかになった。マウスにPDAC由来エキソソームを注入すると、マクロファージや好中球などの自然免疫細胞の動員が増加し、肝星細胞によるフィブロネクチン産生が増加した結果として、肝臓の細胞外マトリックスの組成が変化した。培養ヒトクッパー細胞では、mRNA解析において、PDAC由来エキソソームとの共培養により、肝線維症に関連する遺伝子の発現が増加することが明らかになった。それらの遺伝子の中では、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)をコードする遺伝子がもっとも高度に発現した。マウスにTGF-β阻害剤を注入すると、PDAC由来エキソソームを脾臓に注入後のマクロファージ動員とフィブロネクチン誘導の量が減少した。マウスにおいて、ジフテリア毒素を用いて一過性にマクロファージを枯渇させると、エキソソーム注入によって引き起こされるPDAC細胞コロニー形成の増加が阻止された。膵エキソソームの質量分析データのマイニングにより、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)がメディエーター候補として同定された。PDAC細胞においてMIFをノックダウンすると、放出されるエキソソームの大きさやクッパー細胞との結合には影響がなかったが、肝臓におけるTGF-βおよびフィブロネクチンの存在量が低下し、事前にエキソソームを注入されたマウスにおいて、肝臓にコロニーを形成したPDAC細胞の数が減少した。以上の結果から、PDACエキソソームは、肝臓に転移促進性の環境を作り出すことが示唆される。

L. K. Ferrarelli, Exosomes prep the metastatic site. Sci. Signal. 8, ec150 (2015).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2015年6月9日号

Editor's Choice

がん
エキソソームが転移部位を準備する

Research Article

ヒ素によるPMLユビキチン化には脱SUMO化が必要

c-di-GMPモジュレーターの直接的スクリーニングによりネズミチフス菌ペリプラズムのL-アルギニン感知経路を解明

Research Resources

データ非依存性収集質量分析によるインスリンシグナル伝達の標的リン酸化プロテオミクス

最新のEditor's Choice記事

2024年2月27日号

ccRCCでTBK1を遮断する方法

2024年2月20日号

密猟者がT細胞内で森の番人に転身した

2024年2月13日号

RNAが厄介な状況を生み出す

2024年2月6日号

細胞外WNT伝達分子

2024年1月30日号