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免疫学
組織損傷から適応免疫へ
IMMUNOLOGY
From tissue damage to adaptive immunity
Sci. Signal. 23 Jun 2015:
Vol. 8, Issue 382, pp. ec166
DOI: 10.1126/scisignal.aac8172
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
I. R. Evans, F. S. L. M. Rodrigues, E. L. Armitage, W. Wood, Draper/CED-1 mediates an ancient damage response to control inflammatory blood cell migration in vivo. Curr. Biol. 25, 1606-1612 (2015). [PubMed]
創傷が生じると過酸化水素(H2O2)の局所的産生が誘発され、白血球が損傷部位へ引き寄せられる。脊椎動物では、組織損傷によって誘発されたH2O2がSrcファミリーキナーゼ(SFK)Lynの特定のシステイン残基を酸化することによって、好中球のLyn活性が刺激され、創傷部位への移動が促される。Src42Aは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の唯一のSFKであり、このような酸化還元感受性のシステイン残基が保存されている。Src42Aは、アポトーシス細胞貪食受容体CED-1のDrosophilaホモログであるDraper-Iの細胞内ITAM(免疫受容活性化チロシンモチーフ)をリン酸化する。ITAMをリン酸化されたDraper-IはSyk関連キナーゼSharkを動員してシグナルを伝達する。Evansらは、マクロファージに類似したハエの貪食自然免疫細胞であるヘモサイトの正常な増殖、特異化、移動にはSrc42Aは必要ないが、レーザーで胚表皮に生じさせた創傷に向けてヘモサイトが移動するにはSrc42Aが必要であることを見出した。ヘモサイトのdraperまたはsharkをノックダウンさせると、ヘモサイトは創傷へと移動できなくなった。draper変異体で野生型Draper-Iを発現させると、ヘモサイトの創傷への移動は回復したが、Src42Aによってリン酸化されないDraper-I変異体を発現させても回復しなかった。このようなハエ免疫細胞の創傷部位への移動を調節する機構は、Lynに仲介された免疫受容体ITAMのリン酸化がSykファミリーキナーゼZAP-70を動員する脊椎動物の適応免疫応答に類似している。著者らは、この脊椎動物の適応免疫シグナル伝達経路(Lyn-ITAM-ZAP-70)が、ハエヘモサイトの標的移動を制御するSrc42A-Draper-Shark軸に代表される損傷感知システムから進化してきた可能性を提唱している。