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神経科学
記憶を増強するプリオンタンパク質

NEUROSCIENCE
A pro-memory prion protein

Editor's Choice

Sci. Signal. 07 Jul 2015:
Vol. 8, Issue 384, pp. ec181
DOI: 10.1126/scisignal.aac9389

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Fioriti, C. Myers, Y.-Y. Huang, X. Li, J. S. Stephan, P. Trifilieff, L. Colnaghi, S. Kosmidis, B. Drisaldi, E. Pavlopoulos, E. R. Kandel, The persistence of hippocampal-based memory requires protein synthesis mediated by the prion-like protein CPEB3. Neuron 86, 1433–1448 (2015). [PubMed]

B. Drisaldi, L. Colnaghi, L. Fioriti, N. Rao, C. Myers, A. M. Snyder, D. J. Metzger, J. Tarasoff, E. Konstantinov, P. E. Fraser, J .L. Manley, E. R. Kandel, SUMOylation is an inhibitory constraint that regulates the prion-like aggregation and activity of CPEB3. Cell Reports 11, 1694–1702 (2015). [PubMed]

J. S. Stephan, L. Fioriti, N. Lamba, L. Colnaghi, K. Karl, I. L. Derkatch, E. R. Kandel, The CPEB3 protein is a functional prion that interacts with the actin cytoskeleton. Cell Reports 11, 1772–1785 (2015). [PubMed]

プリオンタンパク質は細胞内に凝集し、一般的に、認知障害を特徴とすることが多い神経変性疾患と関連している。記憶形成および学習は、シナプスでの局所的な翻訳を必要とするシナプス可塑性を介している。3本の研究から、ニューロン内の翻訳制御タンパク質CPEB3(細胞質性ポリA付加エレメント結合タンパク質3)のプリオン様の凝集が、無脊椎動物のみならずマウスにおいても、長期記憶の維持を促進することを明らかにしている。まずStephanらは、グルタミン酸刺激後の培養マウスニューロンではCPEB3が凝集することを見いだした。酵母における欠失解析と質量分析、ならびにそれを補足する培養ニューロンにおける免疫共沈降アッセイから、CPEB3がアクチン細胞骨格に結合しており、この相互作用はCPEB3の凝集および(アクチンをコードする転写産物を含む)mRNA翻訳促進におけるその働きに不可欠であることを明らかにした。このことは、フィードフォワード制御が働いている可能性を示唆している。第2の研究でFioritiらは、学習と記憶におけるCPEB3の役割を明らかにした。培養マウス海馬ニューロンのグルタミン酸またはグリシンによる刺激、もしくは海馬スライスのドパミンによる刺激は、CPEB3の存在量を増加させた。さらに、水迷路のトレーニングを受けたマウスまたは恐怖条件付けを行ったマウスでは、未処置のマウスに比べ、海馬抽出物中のCPEB3の存在量と凝集が多く認められた。前脳で特異的にCPEB3を欠失しているマウスでは、短期記憶や自発運動に変化は認められなかったが、海馬における長期増強(シナプス可塑性の1マーカー)および長期記憶の固定(学習)が障害されていた。水迷路を用いた学習試験後にCPEB3を消失させたところ、マウスにおける記憶の想起が障害された。このことは、長期記憶の形成と維持の両方に、CPEB3が働いていることを示唆している。ノックアウトマウスでも、水迷路トレーニング後に新規に合成されるGluA1およびGluA2(AMPA受容体サブユニット)の存在量が減少し、このことは、AMPA受容体をコードするmRNAの活性依存的な翻訳が、CPEB3の非存在下で障害されることを示していた。StephanらおよびFioritiらはともに、CPEB3活性がN末端領域に依存していることを明らかにした。

凝集したCPEB3には有益な役割があるものの、上記の研究は、未制御のタンパク質凝集は細胞にとって有害であることを示唆している。第3の試験でDrisaldiらは、CPEB3の凝集および機能の生化学的調節を検討した。培養系で未刺激であった、または未処置マウスから単離したマウス海馬ニューロンのライセート中では、CPEB3はSUMO化されていた。培養海馬ニューロンのグリシン刺激、またはマウスの恐怖条件付けにより、SUMO化CPEB3の画分が減少し、CPEB3の凝集が増加した。グリシン処理した海馬ニューロンで、非切断型SUMO-2分子と融合したキメラCPEB3を過剰発現させると、CPEB3の凝集および翻訳活性が阻害され、シナプス可塑性と関連する形態変化である糸状仮足の形成が低下した。SUMO-2をコードする転写産物はCPEB3の標的であり、SUMO-2の過剰発現はCPEB3のSUMO化を増大させ、その凝集を阻害した。このことは、ネガティブフィードバックループがCPEB3の凝集を制限していることを示唆していた。まとめると、これらの試験は、翻訳を介したシナプス可塑性の制御の根底にある機構を明らかにしている。

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2015年7月7日号

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