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生理学
定期的な食事制限が健康を増進する

PHYSIOLOGY
Periodic dieting promotes health

Editor's Choice

Sci. Signal. 14 Jul 2015:
Vol. 8, Issue 385, pp. ec187
DOI: 10.1126/scisignal.aac9913

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Brandhorst, I. Y. Choi, M. Wei, C. W. Cheng, S. Sedrakyan, G. Navarrete, L. Dubeau, L. P. Yap, R. Park, M. Vinciguerra, S. Di Biase, H. Mirzaei, M. G. Mirisola, P. Childress, L. Ji, S. Groshen, F. Penna, P. Odetti, L. Perin, P. S. Conti, Y. Ikeno, B. K. Kennedy, P. Cohen, T. E. Morgan, T. B. Dorff, V. D. Longo, A periodic diet that mimics fasting promotes multi-system regeneration, enhanced cognitive performance, and healthspan. Cell Metab. 22, 86-99 (2015). [PubMed]

カロリー制限と絶食は多くの種で老化を遅らせ、寿命を延ばす。ヒトとげっ歯類では、断続的な絶食は、たとえばインスリン感受性を改善し、血圧を下げ、炎症の減らすことによって、代謝疾患と加齢関連疾患を予防する。Brandhorstらは、2日ごとに栄養豊富な培地と水を切り替えて酵母細胞を培養すると、過酸化水素存在下での生存が大幅に改善され、長寿との関連がすでに示されている保存されたストレスシグナル伝達の構成要素に依存しない形で細胞の寿命が延びることを見出した。マウスにおける定期的な絶食の効果を調べるために、著者らは、絶食を模した低カロリー低タンパク質食(FMD)を開発した。FMDは絶食によって誘発されるのと同様の変化を代謝マーカー[血糖、ケトン体、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF-1)、IGF-1抑制因子IGFBP-1]に引き起こし、その変化は自由摂食を再開させると逆戻りした。数ヵ月にわたって老化マウスに月2回、FMDを4日間与え、FMD期間外には通常の固形飼料を自由に摂食させた。FMDマウスではFMD期間外の摂食量が増加し、対照マウスと比べて累積カロリー摂取量に正味の差は認められなかったが、定期的にFMDを与えられたマウスの体重は徐々に減少した。定期的なFMDによる心機能または腎機能への影響は検出されず、再栄養によって肝臓と骨格筋の再生が誘導された。対照マウスと比べて、定期的にFMDを与えられた老化マウスでは腫瘍の自然発症が減少し、骨密度が高まり、海馬の神経発生が亢進され、骨格筋における組織保護性のオートファジーが増加し、内臓脂肪量が減少し、炎症と免疫老化が抑制された。また、定期的なFMDによって寿命も延長され、運動協調性、短期記憶、長期記憶の試験成績も改善された。次に、ヒト健常者集団を、通常食を摂り続ける対照群と、すべての必須微量栄養素と1日あたり725〜1000カロリーを摂取できるFMDを3ヵ月にわたって月1回、連続5日間摂食し、FMD期間外には通常の運動ルーチンや食習慣を維持する群にランダムに分けた。3ヵ月終了時点で通常食を再開した後、FMD群では除脂肪体重が増加し、血糖、循環IGF-1、体重、腹部脂肪、心疾患のリスク因子であるC反応性タンパク質の低下が持続した。定期的な絶食による代謝、老化、長寿への影響をより徹底して特徴づけるには、ヒトを対象としたより長期間の研究がさらに必要だが、今回の結果は、バランスのよい低カロリー食の定期的な摂食が健康上の多くの利益をもたらす可能性を示す興味深いエビデンスを提供している。

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2015年7月14日号

Editor's Choice

生理学
定期的な食事制限が健康を増進する

Research Article

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