• ホーム
  • がん トリプルネガティブ乳がんにおけるLINKのつながり

がん
トリプルネガティブ乳がんにおけるLINKのつながり

CANCER
A “LINK” in triple-negative breast cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 09 Feb 2016:
Vol. 9, Issue 414, pp. ec24
DOI: 10.1126/scisignal.aaf4266

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Lin, C. Li, Z. Xing, Q. Hu, K. Liang, L. Han, C. Wang, D. H. Hawke, S. Wang, Y. Zhang, Y. Wei, G. Ma, P. K. Park, J. Zhou, Y. Zhou, Z. Hu, Y. Zhou, J. R. Marks, H. Liang, M.-C. Hung, C. Lin, L. Yang, The LINK-A lncRNA activates normoxic HIF1α signaling in triple-negative breast cancer. Nat. Cell Biol. 18, 213-224 (2016). [PubMed]

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)が欠如した細胞からなり、治療選択肢が限られている。低酸素誘導因子1α(HIF-1α)は、通常は低酸素条件下でのみ安定化されて活性化する転写因子であり、そのような条件下で血管新生を亢進し、生存を促進し、代謝リプログラミングを引き起こす。Linらは、長鎖非コードRNA(lncRNA)であるLINK-A(long intergenic noncoding RNA for kinase activation、キナーゼ活性化のための長鎖遺伝子間非コードRNA)が、TNBCにおいて正常な酸素条件下でのHIF-1αの異常な安定化を引き起こすシグナル伝達経路を媒介することを見出した。LINK-Aの存在量は、TNBC組織では隣接する正常組織やシングルまたはダブルネガティブ腫瘍よりも多かった。たいていのIncRNAと異なり、LINK-Aは主に細胞質に局在し、そこで上皮増殖因子受容体(EGFR)、TNBCの進行と転移を促進する受容体である膜貫通糖タンパク質GPNMB、そしてHIF-1αと間接的に会合する。さらに、LINK-Aは乳腺腫瘍キナーゼ(BRK)やロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)と直接的に会合する。TNBC細胞株であるMDA-MB-231細胞では、ヘパリン結合性上皮増殖因子(HB-EGF)への曝露によってEGFRとGPNMBのヘテロ二量体化とEGFR、GPNMB、BRK、HIF-1αのリン酸化が誘導される。HB-EGFによって刺激されると、EGFRがGPNMBのTyr525をリン酸化し、それによってEGFRとGPNMBが相互作用し、その後、BRKのTyr351がリン酸化されてBRKが活性化する。LINK-Aは、BRKをEGFR-GPNMBヘテロ二量体へと動員し、BRKの立体構造変化を促進させることによってTyr351のリン酸化を可能にしていた。BRKはHIF-1αのTyr565をリン酸化し、このリン酸化イベントによって、正常酸素分圧条件下での分解の引き金となる翻訳後修飾であるHIF-1αのプロリルヒドロキシル化が妨げられた。LRRK2はHIF-1αのSer797をリン酸化し、それによってHIF-1αと転写共役因子p300の相互作用が促進された。正常酸素分圧下のMDA-MB-231細胞では、HB-EGFがHIF-1α標的遺伝子の転写を促進した。MDA-MB-231細胞のLINK-Aをノックダウンさせると、HIF-1αの転写活性が損なわれ、マウスへの異種移植片の増殖が抑制された。TNBC患者由来のサンプルでは、GPNMB、BRK、HIF-1αのTyr565とSer797のリン酸化がいずれも増加しており、これが生存期間の短縮と相関した。今回の結果は、lncRNAとタンパク質の相互作用によって仲介されるHB-EGF誘導性シグナル伝達経路を見出したとともに、TNBC治療の標的候補を明らかにするものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2016年2月9日号

Editor's Choice

がん
トリプルネガティブ乳がんにおけるLINKのつながり

Research Article

腫瘍と内皮細胞の相互作用のホスホプロテオミクス解析により経内皮遊走の制御機構を特定

μ-オピオイド受容体の細胞膜局在は時空間シグナル伝達を制御する

Reviews

細胞機能の全合成を目指して:合成生物学によって細胞ダイナミクスを再構成する

最新のEditor's Choice記事

2024年4月9日号

伸張を感知して食欲を抑える

2024年4月2日号

アルツハイマー病に関連する脂肪滴

2024年3月26日号

傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

2024年3月19日号

痒みを分極化する

2024年3月12日号

抗体の脂肪への蓄積による老化