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転写
lncRNAは遺伝子発現も促進する

TRANSCRIPTION
lncRNAs promote gene expression, too

Editor's Choice

Sci. Signal. 23 Feb 2016:
Vol. 9, Issue 416, pp. ec36
DOI: 10.1126/scisignal.aaf4894

Sudhakaran Prabakaran

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. C. Cloutier, S. Wang, W. K. Ma, N. Al Husini, Z. Dhoondia, A. Ansari, P. E. Pascuzzi, E. J. Tran, Regulated formation of lncRNA-DNA hybrids enables faster transcriptional induction and environmental adaptation. Mol. Cell 61, 393-404 (2016). [PubMed]

長鎖非コードRNA(lncRNA)は、主に転写サイレンシングに関連する。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の誘導型GAL遺伝子群は、グルコースに富む培地で酵母を増殖させた場合にはグルコース依存性抑制因子によって発現を抑制される。この酵母をガラクトースに富む培地での培養に切り替えると、GAL 10 lncRNAとGAL 10s lncRNAという2つのlncRNA(まとめてGAL lncRNAと呼ばれ、いずれもGAL遺伝子群から発現される)が、GAL1GAL10GAL7などの抑制されていたGAL遺伝子の誘導を促進する。Cloutierらは、抑制されていたGAL遺伝子がlncRNAによって誘導される機序を調べた。RNAヘリカーゼDBP2を欠失したDBP2-酵母では、グルコースからガラクトースへと栄養を切り替えたときのGAL遺伝子群の転写産物の増加が、野生型酵母よりも顕著であった。また、ノーザンブロット解析では、DBP2-株およびDBP2-トランスGAL lncRNA株(GAL lncRNA遺伝子がGAL遺伝子群内では不活性化されており、遠隔部位に挿入されている菌株)の場合に、野生株またはDBP2- GAL lncRNA-二重変異株と比べてGAL1GAL10GAL7転写産物の誘導がより迅速であり、存在量が増大していたことから、GAL lncRNAコード配列はGAL遺伝子群内に存在しなくても機能することが示唆された。Rループと呼ばれるDNA-RNAハイブリッドを分解する酵素RNaseHを発現するプラスミドを有する酵母菌株ではGAL遺伝子群の遺伝子誘導が減少したことから、GAL lncRNAはRループ構造の形成を誘導してGAL遺伝子群の発現を亢進している可能性がある。実際、野生型酵母とDBP2-酵母のいずれにおいてもGAL遺伝子群内にRループが形成されており、DNA-RNA免疫沈降(DRIP)アッセイによって検出された。核内のDpb2を欠失させた酵母では、野生型酵母菌株と比べて、DRIPアッセイでRループ構造が多くみられた。公開されている転写データとDRIPデータとの比較から、DBP2-酵母細胞で発現が増加している転写産物は、野生型細胞においてRループ関連遺伝子に関連することが明らかになり、これは、Rループ構造の形成を阻害するDBP2の作用と一致する。遺伝子のループ形成を同定するクロマチンコンフォーメーションキャプチャー(3C)解析法では、栄養の切り替え後、DBP2-株で、GAL lncRNA-株またはDBP2- GAL lncRNA-株と比べて、プロモーター・ターミネーター間のループ形成に時間依存的な増加がみられた。GAL lncRNA-株では、GAL遺伝子群のプロモーターで転写抑制因子の結合が増加していた。また、炭素源としてガラクトースを与えた場合、GAL lncRNA欠失酵母は、野生型酵母に比べて増殖が不十分であった。このように、lncRNAはRループ構造の形成を可能にすることによって遺伝子発現を誘導する可能性がある。

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