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B細胞が膵がんを焚きつける

B cells fuel pancreatic cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 05 Apr 2016:
Vol. 9, Issue 422, pp. ec77
DOI: 10.1126/scisignal.aaf8036

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. J. Gunderson, M. M. Kaneda, T. Tsujikawa, A. V. Nguyen, N. I. Affara, B. Ruffell, S. Gorjestani, S. M. Liudahl, M. Truitt, P. Olson, G. Kim, D. Hanahan, M. A. Tempero, B. Sheppard, B. Irving, B. Y. Chang, J. A. Varner, L. M. Coussens, Bruton tyrosine kinase-dependent immune cell cross-talk drives pancreas cancer. Cancer Discov. 6, 270-285 (2016). [PubMed]

Y. Pylayeva-Gupta, S. Das, J. S. Handler, C. H. Hajdu, M. Coffre, S. B. Koralov, D. Bar-Sagi, IL35-producing B cells promote the development of pancreatic neoplasia. Cancer Discov.6, 247-255 (2016). [PubMed]

K. E. Lee, M. Spata, L. J. Bayne, E. L. Buza, A. C. Durham, D. Allman, R. H. Vonderheide, M. C. Simon, Hif1α deletion reveals pro-neoplastic function of B cells in pancreatic neoplasia.Cancer Discov. 6, 256-269 (2016). [PubMed]

A. Roghanian, C. Fraser , M. Kleyman, J. Chen, B cells promote pancreatic tumorigenesis.Cancer Discov. 6, 230-232 (2016). [PubMed]

要約 免疫細胞が腫瘍細胞を根絶することもあるが、腫瘍や腫瘍微小環境の状態が免疫細胞の活性を抑制することも多い。そのため、免疫療法は多くのがんに有効である可能性がある。侵襲性膵管腺がん(PDAC)は、炎症の段階的な進行、リンパ系と骨髄系の両方の白血球による大量浸潤などを特徴とする。今回、3件の研究により、B細胞がPDACにいかに寄与するかを著している(Roghanian et alも参照)。Gundersonらは、PDACのマウスモデルを用いて、B細胞がマクロファージの免疫抑制性表現型への極性化を促進することを示した。共培養チャンバーアッセイでは、マクロファージにおけるこのような作用はB細胞のブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の活性化によって放出されるB細胞由来分子によって媒介されることが示された。B細胞由来の免疫グロブリン(Ig)を含む複合体はマクロファージのIg-γ受容体(FcγR)を活性化させることができ、FcγRが活性化されると、マクロファージのホスファチジルイノシトール3キナーゼのp110γサブユニット(PI3Kγ)の下流でBTKに媒介されるインテグリンシグナル伝達が誘導され、マクロファージの血液循環から腫瘍への動員が促進される。著者らは、BTK阻害薬イブルチニブまたはPI3Kγ阻害薬のいずれかでマウスを処置すると、細胞傷害性T細胞の抗腫瘍活性が回復し、PDACの増殖が抑制され、化学療法薬ゲムシタビンに対するマウスの反応性が改善されることを示した。Pylayeva-Guptaらは、B細胞に依存する腫瘍増殖でマクロファージのFcγR活性化が担う役割を調べたが、マウスの同所性PDAC異種移植片に浸潤したB細胞のIg産生量に増加は認められなかった。代わりに、B細胞の養子移入技術を用いて、マウスにおけるKRAS変異型PDACの増殖が、インターロイキン35(IL-35)を産生するB細胞に依存することを示した。IL-35は、自己免疫疾患に関連し、膵がん患者の血清中で増加するサイトカインである。この著者らは、間質線維芽細胞から分泌されるケモカインCXCL13の遮断抗体でマウスを処置すると、B細胞の同所性PDAC腫瘍への動員が阻害されることも示した。低酸素状態も侵襲性PDACのもう1つの特徴であるが、患者のPDACの進行と低酸素誘導因子1α(HIF-1α)の存在量との関連に一貫性はない。また、Leeらは、KRAS変異型PDACのマウスモデルとヒトサンプルを用いて、膵腫瘍の初期の段階でHIF-1α量は増加するが、HIF-1αを欠失させると、予想外にPDACの発達が加速することを示した。これは、HIF-1αの欠失によって、B細胞を膵臓に動員するCXCL13の量が腫瘍微小環境で増加したからである。B細胞を枯渇させる抗体でマウスを処置すると、マウスの膵上皮内腫瘍の進行が阻害された。まとめると、これらの研究は、腫瘍微小環境におけるB細胞の重要性を浮き彫りにし、治療的介入のための新たな標的候補を明らかにしている。

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2016年4月5日号

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