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感染すると都合の悪い時間帯
A bad time of day to get an infection
Sci. Signal. 24 May 2016:
Vol. 9, Issue 429, pp. ec120
DOI: 10.1126/scisignal.aag1854
Nancy R. Gough
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
K. Gagnidze, K. H. Hajdarovic, M. Moskalenko, I. N. Karatsoreos, B. S. McEwen, K. Bulloch, Nuclear receptor REV-ERBα mediates circadian sensitivity to mortality in murine vesicular stomatitis virus-induced encephalitis. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 5730-5735 (2016). [PubMed]
要約
免疫機能は概日パターンで変動する。Gagnidzeらは、この概日パターンが、鼻部の感覚神経に侵入し、嗅球に移動し、脳に感染して脳炎を引き起こす水疱性口内炎ウイルス(VSV)を鼻腔内感染させたマウスの死亡率に影響することを見出した。概日周期の休息期の開始時(マウスの場合は明期、ZT0)に感染させたマウスでは、大部分(95%)が死亡したが、活動期の開始時(暗期、ZT12)に感染させたマウスでは、死亡したマウスは半数以下(40%)であった。いずれの時点で感染させたマウスも抗ウイルス性の炎症性サイトカイン反応を呈したが、その血中の蓄積パターンが異なった。ZT0に感染させたマウスは持続性の炎症反応を示し、炎症性サイトカインCCL2の濃度が上昇し、抗炎症性ホルモンのコルチゾンの蓄積も持続した。ZT12に感染させたマウスの嗅球と比べて、ZT0に感染させたマウスでは、炎症性サイトカインの転写産物の増加と関連する単球、マクロファージ、エフェクター樹上細胞の蓄積量も増加していた。概日周期を調節する転写因子をコードする転写産物のなかでも、概日制御転写因子Rev-ERBαのmRNAは、未感染マウスの嗅球でZT12に最も発現が高かった。Rev-ERBαを薬理学的に阻害すると、ZT12に感染させたマウスの死亡率は上昇し、感染から12時間後(Rev-ERBαタンパク質が存在するはずだった時間と一致)の嗅球内ではCcl2転写産物が増加していた。著者らは、Rev-ERBαがCcl2の発現を抑制し、死につながる過剰な神経炎症を引き起こす炎症性単球の浸潤を制限している可能性があると提唱している。これらのデータは、感染時刻が免疫反応において重要な意味をもつ要因であり、感染症の転帰に重大な影響を与えうることを示している。