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過去の食事が炎症を刺激する
Primed for inflammation by past meals
Sci. Signal. 28 Jun 2016:
Vol. 9, Issue 434, pp. ec149
DOI: 10.1126/scisignal.aah4253
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
H. Weavers, I. R. Evans, P. Martin, W. Wood, Corpse engulfment generates a molecular memory that primes the macrophage inflammatory response. Cell 165, 1658-1671 (2016). [PubMed]
要約
適応免疫系とは対照的に、マクロファージを含む自然免疫系には免疫記憶がないと考えられている場合が多い。Weaversらは、ショウジョウバエ(Drosophila)において、発生期のアポトーシス残骸の貪食により、マクロファージが、成体期に組織損傷または感染の部位に動員されるようにプライミングされることを示した。H99胚では、発生期のアポトーシスに必要な3つの遺伝子が欠損しているため、この過程が起こらない。発生期のH99胚において、マクロファージは正常に分化し、適切な部位に遊走するように見えた。さらにマクロファージは、たまたま創傷部位の近くに位置した場合には、蛍光ビーズや壊死組織を貪食した。しかし、H99胚のマクロファージは、創傷部位に遊走しなかった。この欠損は、マクロファージにより貪食されるアポトーシス残骸を生じさせるUV曝露後のアポトーシスの刺激によってレスキューされた。マクロファージのプライミングには、キナーゼJNKの活性が刺激され、その結果として貪食受容体DraperのmRNAおよびタンパク質存在量が増加させる細胞質カルシウム濃度の高頻度で一過的な上昇が必要であった。残骸を取り込む前のナイーブな野生型胚、またはUV照射を受けていないH99胚では、DraperのmRNAおよびタンパク質存在量が低かった。H99胚におけるDraperの過剰発現により、マクロファージの創傷部位への動員が可能になった。H99マクロファージは、創傷部位に遊走できないだけでなく、大腸菌(E. coli)を貪食せず、この欠損は、UV誘導性のアポトーシスの刺激またはDraperの異所性発現の後にレスキューされた。創傷部位への遊走のためのシグナル伝達要件と同様に、野生型マクロファージにおける大腸菌の貪食には、細胞質カルシウムの増加とJNKシグナル伝達が必要であった。このように、発生期のアポトーシス残骸の貪食によって、Draper存在量の増加を介して免疫記憶が生み出され、マクロファージが損傷または感染部位に遊走できるようになる。