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繊維を多く食べるもう1つの理由
Another reason to eat more fiber
Sci. Signal. 16 Aug 2016:
Vol. 9, Issue 441, pp. ec184
DOI: 10.1126/scisignal.aai7897
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USAM. Kim, Y. Qie, J. Park, C. H. Kim, Gut microbial metabolites fuel host antibody responses.Cell Host Microbe 20, 202-214 (2016). [PubMed]
要約
腸内細菌が食物繊維を発酵させるとき、それらは、腸上皮細胞のエネルギー源であり宿主の生理機能と免疫機能の重要な調節因子でもある短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する。SCFAは宿主の代謝経路に影響し、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を活性化したりヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害したりすることができる。Kimらは、抗体産生B細胞の生成をSCFAが亢進することを見いだした。マウスに高繊維食またはSCFAであるプロピオン酸を給餌したとき、血清および腸管腔内の免疫グロブリン量が増加し、腸管内の抗体産生B細胞数および結腸内の免疫グロブリンA(IgA)によって被覆された細菌数が増加した。In vitroにおいて、SCFAである酢酸、プロピオン酸および酪酸はそれぞれマウスまたはヒトのナイーブB細胞から抗体分泌形質細胞への分化を刺激し、酢酸は、IgAおよびIgGの産生およびB細胞の分化に関与する遺伝子の発現を促進した。マウスB細胞を用いた実験から、これらの影響は、SCFAを介したGPCRの活性化が原因ではないことが示された。3種類のSCFAはそれぞれ培養マウスB細胞においてヒストンのアセチル化を亢進し、マウスにプロピオン酸または食物繊維を給餌したとき、in vivo でB細胞のヒストンアセチル化が亢進した。またSCFAは初代培養マウスB細胞においてアセチル-CoAの産生、解糖、ミトコンドリア呼吸、並びに脂質滴の産生も増加させた。これらの代謝変化は、抗体産生というエネルギーを多く消費するプロセスを助ける可能性がある。最後に、食物繊維とプロピオン酸はそれぞれ、シトロバクター・ローデンチウム(Citrobacter rodentium)感染に対するマウスの感受性を減少させ、この病原体に曝露した後の特異的な抗C. rodentium抗体の産生を増加させた。このように、SCFAは複数の機序を介して働きB細胞の抗体産生能を促進している。