味覚で光を感知する

A taste for the light

Editor's Choice

Sci. Signal. 29 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 456, pp. ec279
DOI: 10.1126/scisignal.aal4600

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Gong, Y. Yuan, A. Ward, L. Kang, B. Zhang, Z. Wu, J. Peng, Z. Feng, J. Liu, X. Z. S. Xu, The C. elegans taste receptor homolog LITE-1 is a photoreceptor. Cell 167, 1252-1263 (2016). [PubMed]

要約

線虫(Caenorhabditis elegans)は眼が欠失しているものの、光を検出して過剰なUV曝露を避けることができる。このような光回避行動には、味覚受容体ファミリーに属する7回膜貫通型受容体であるLITE-1が必要である。GongらはLITE-1が紫外線を直接検出するのか、または光誘導性の化学反応から生じる最終産物(活性酸素種など)を検出するのかを検討した。著者らは筋細胞中にタグ標識LITE-1を過剰発現する線虫を作製した。LITE-1の配向の解析から、これがオプシンファミリーに属する7回膜貫通型光受容体のそれと反転したトポロジーである、N末端を細胞内、C末端を細胞外にもつことが示された。LITE-1を過剰発現する筋細胞においてUV曝露は一過性カルシウム上昇を引き起こし、トランスジェニック線虫の筋収縮および身体の麻痺を誘発した。トランスジェニック線虫の筋組織から精製したLITE-1はUVBとUVA光の両方を捕集し、この特性は変性により消失した。この結果は、この光感受性が、光吸収のための発色団を必要とするクリプトクロムやオプシンと異なる、LITE-1に固有のものであることを示していた。膜貫通ドメインに変異をもつLITE-1バリアントを筋特異的に発現させた線虫では、UVAは筋細胞の一過性カルシウム上昇も身体麻痺も誘発しなかった。しかし、これらの変異線虫はUVB光に対する感受性を保持していた。フォトブリーチ処理を行うと、LITE-1のUVA光の捕集能が低下したが、UVB光の捕集能は影響されなかった。変異解析から、LITE-1によるUVAとUVB光の両方の吸収に、Trp77およびTrp328が必要であることが示された。LITE-1と構造的類縁関係にあるが、Trp77およびTrp328に相当する位置にトリプトファン残基をもたない味覚受容体GUR-3は、光感受性ではなかった。しかし、Trp77に相当する位置にトリプトファン残基を有するGUR-3の変異体はUBV光を吸収し、このGUR-3変異を筋細胞に発現している線虫では身体麻痺が誘発された。このようにLITE-1は、これまで特徴づけられていた光受容体とは異なる特性をもつ光受容体である。

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2016年11月29日号

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