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がん細胞遊走の低酸素で誘導される可塑性
Hypoxia-induced plasticity in cancer cell migration
Sci. Signal. 28 Feb 2017:
Vol. 10, Issue 468,
DOI: 10.1126/scisignal.aan0467
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
S. Lehmann, V. Te Boekhorst, J. Odenthal, R. Bianchi, S. van Helvert, K. Ikenberg, O. Ilina, S. Stoma, J.Xandry, L. Jiang, R. Grenman, M. Rudin, P. Friedl, Hypoxia induces a HIF-1-dependent transition from collective-to-amoeboid dissemination in epithelial cancer cells. Curr. Biol. 27, 392-400 (2017).
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低酸素状態ががん細胞の集団的遊走からアメーバ様遊走への切り替えを刺激する。
要約
転移性がん細胞は、極性をもち互いに接着する一群の細胞として、個々にまたは集団で遊走することができる。個々に遊走する細胞は、その細長い形状を保持して上皮間葉転換(EMT)マーカーをコードする遺伝子を発現するか、または、丸い形状をとってアメーバ様の動きを示す。転移性腫瘍細胞は遊走様式を切り替えることができる。Lehmann らは、腫瘍微小環境において存在するような低酸素状態が、集団的遊走を示すがん細胞に対し、集団的遊走からアメーバ様遊走への切り替えを誘導することを見出した。正常酸素条件下で三次元(3D)培養したとき、高転移性の4T1マウス乳がん細胞は集団的遊走を示し、ごく一部の細胞が集団を離れ個別に遊走した。しかし低酸素条件下では、より多くの割合の細胞が低酸素誘導因子1(HIF-1)依存性に集団を離れた。また低酸素状態は3D培養下で、非転移性ヒトUT-SCC-38頭頸部扁平上皮がん細胞の浸潤を刺激した。4T1細胞の集団から播種した細胞の大半は、丸いアメーバ様の形状を示した。HIF-1活性化剤であるジメチルオキサリルグリシン(DMOG)による4T1培養細胞の処理は、丸い細胞の播種を促進し、これらの細胞の核内へのEMTマーカーTwistの蓄積を促進した。4T1細胞におけるTwistの過剰発現は、正常酸素条件下で丸い播種細胞数の増加を誘導し、Twistのノックダウンは、正常酸素条件下でDMOG誘導性の単一細胞の播種を抑制した。DMOGで処理した4T1細胞をマウスに注射すると、肺転移の数および大きさが増加した。頭頸部扁平上皮がんの臨床検体において、HIF-1およびHIF-1で制御される標的分子の存在量は、転移と正に相関していた。これらの結果は、EMTマーカーの誘導が間葉系細胞の遊走時にのみ認められるものではないこと、さらに、低酸素状態が古典的EMT(間葉系細胞の遊走)のみでなくアメーバ様遊走も刺激することを示している。