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オートファジーとビタミンD

Autophagy and vitamin D

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 Mar 2017:
Vol. 10, Issue 471, eaan2526
DOI: 10.1126/scisignal.aan2526

Alexandra A. Mushegian

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. E. Tavera-Mendoza, T. Westerling, E. Libby, A. Marusyk, L. Cato, R. Cassani, L. A. Cameron, S. B. Ficarro, J. A. Marto, J. Klawitter, M. Brown, Vitamin D receptor regulates autophagy in the normal mammary gland and in luminal breast cancer cells. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 114, E2186-E2194 (2017).
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ビタミンD受容体は乳房組織における基底レベルのオートファジーを抑制し、これをビタミンDが抑制解除してがんの進行を遅らせる

要約

疫学的エビデンスから高い循環血中ビタミンD濃度と低い乳がんリスクの関連性が示唆され、さらにin vitro試験からはビタミンDが一部のがんに抗増殖作用をもつことが示唆されている。生物学的活性をもつホルモン型ビタミンDである1,25(OH2)D3は、多様な組織において発現し多数の標的遺伝子をもつ核受容体で転写因子でもあるビタミンD受容体(VDR)と相互作用する。Tavera-Mendozaらは、乳がんに対するビタミンDの保護的作用がそのVDRの調節に起因し、これがマウスのルミナル型乳がん細胞および健康な乳房組織においてオートファジーを制御していることを見出した。in vitroにおいて、1,25(OH2)D3はルミナルA型およびB型サブタイプの乳がん(乳がん症例の50〜60%を構成する)の細胞増殖を制限したが、他のサブタイプの乳がん細胞の増殖は制限しなかった。ホルモンにより増殖が抑制されている細胞では、オートファジーが亢進しており、それはリソソーム追跡実験およびオートファジーマーカーの検出により確認された。健康なマウスの飼料にさらにビタミンDを補給すると、乳腺組織のオートファジーが亢進し、Cancer Genome Atlasからのトランスクリプトミクスデータを検討したところ、健康なヒト乳腺組織ではルミナル型乳がん組織に比べオートファジー関連遺伝子の基底発現が高いことが示された。乳がん細胞を異種移植したマウスにビタミンDとクロロキン(オートファゴソーム分解を阻害する)を併用投与すると、異種移植片が顕著に縮小した。VDR-欠損マウスでは、野生型マウスにおいて1,25(OH2)D3により誘発されるよりもさらに大きくオートファジーが誘発され、1,25(OH2)D3の投与が追加的な効果をもたなかった。このことは、VDRが恒常的にオートファジーを抑制し、これをビタミンDが部分的に抑制解除することを示唆している。ルミナル型乳がん細胞のChIP-seq解析から、VDRはオートファジーの必須タンパク質であるLC3Bをコードする遺伝子に結合すること、しかも1,25(OH2)D3が遺伝子転写を活性化することが確認された。これらの結果は、乳房組織においてリガンドと結合したVDRがオートファジーを促進し、これを制御することで一部のがんの進行を阻止できることを示唆している。

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2017年3月21日号

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