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ハイライト:放射線性唾液腺炎を理解する

Highlight: Understanding radiation sialadenitis

Editor's Choice

Sci. Signal. 06 Jun 2017:
Vol. 10, Issue 482, eaan8666
DOI: 10.1126/scisignal.aan8666

Michael B. Yaffe

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

X. Liu, B. Gong, L. B. de Souza, H. L. Ong, K. P. Subedi, K. T. Cheng, W. Swaim, C. Zheng, Y. Mori, I. S.Ambudkar, Radiation inhibits salivary gland function by promoting STIM1 cleavage by caspase-3 and loss of SOCE through a TRPM2-dependent pathway. Sci. Signal. 10, eaal4064 (2017).
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カスパーゼ-3の非アポトーシス性機能が、頭頸部がん放射線療法の唾液腺合併症の根底にある。

要約
頭頸部がん治療にはしばしば、外照射や、131Iなどの体内限局性ラジオアイソトープを用いた放射線療法が行われる。しかし、これらの治療法の主な用量制限毒性は唾液腺の損傷誘発性機能障害、すなわち放射線性唾液腺炎であり、これにより疼痛、腫脹および嚥下障害に至る。照射された唾液腺、特に高線量が照射された唾液腺には、最終的に炎症性滲出液や置換性線維化がみられるが、この合併症の基礎となる病態生理は依然として不明であった。そして今、Ambudkarと共同研究者らからの論文は、その基礎にある分子機構の大半を解明した。正常な条件下では、細胞外から唾液腺腺房細胞に流入したCa2+が、ER限局性のCa2+センサータンパク質であるSTIM1を活性化し、ストア作動性Ca2+チャネルであるTRPC1およびOrai1を活性化することで液分泌に至る。著者らは、異なるカルシウム透過性非選択的イオンチャネルであるTRPM2が放射線やROSにより活性化され、それによってミトコンドリアのCa2+が増加し、それに伴ってROS産生の増加、ミトコンドリア膜電位の消失および活性型カスパーゼ-3の放出が生じることを明らかにした。次にカスパーゼ-3はSTIM1を効果的に切断し、液分泌に必要なストア活性化型Ca2+チャネルを機能不全にした。TRPM2をノックアウトしたマウスは、STIM1発現コンストラクトのアデノウイルス送達により照射後唾液腺におけるSTIM1発現が回復したマウスのように、ストア作動性Ca2+チャネルの放射線誘発性機能不全から保護された。本研究から、頭頸部がんの放射線療法に伴う唾液腺合併症の緩和に利用できるかもしれない多数の治療戦略候補、例えばTRPM2またはカスパーゼ-3を阻害する薬物や、非切断型STIM1の標的デリバリーなどが明らかにされた。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

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2017年6月6日号

Editor's Choice

ハイライト:放射線性唾液腺炎を理解する

Research Article

IRE1αはアポトーシス抵抗性を付与することによってウイルス感染を促進する

小胞体ストレス応答の細胞間伝播ががん細胞の生存と薬剤耐性を促進する

放射線は、カスパーゼ-3によるSTIM1切断およびTRPM2依存性経路を介したSOCEの消失を促進することにより唾液腺機能を阻害する

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