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裸のRNAでメッセージを送る

Messaging with naked RNA

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Aug 2017:
Vol. 10, Issue 490, eaao5132
DOI: 10.1126/scisignal.aao5132

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

B. Y. Nabet, Y. Qiu, J. E. Shabason, T. J. Wu, T. Yoon, B. C. Kim, J. L. Benci, A. M. DeMichele, J. Tchou, J.Marcotrigiano, A. J. Minn, Exosome RNA unshielding couples stromal activation to pattern recognition receptor signaling in cancer. Cell 170, 352-366.e13 (2017).
Google Scholar

I. Matei, H. S. Kim, D. Lyden, Unshielding exosomal RNA unleashes tumor growth and metastasis. Cell 170,223-225 (2017).
Google Scholar

活性化された間質細胞が遮蔽されていないRNAをエクソソームに放出し、この非遮蔽RNAが、乳がん細胞のインターフェロン刺激遺伝子発現と腫瘍の増殖を誘導する。

要約
RIG-Iは、5′三リン酸(PPP)末端などのウイルスRNA特有の特徴をもつ細胞質RNAを検知すると、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)の発現を誘導する。ISG発現はいくつかの乳腺腫瘍でも起こり、一般的に、進行が比較的緩やかなER陽性乳がんよりも、進行が速いトリプルネガティブ乳がん(TNBC)にみられ、ISGの高発現は再発と相関する。Nabet らは(Mateiらも参照)、乳がん細胞におけるRIG-Iを介するISG発現が、活性化された間質線維芽細胞からエクソソームに放出される、裸の非コードRNAによって引き起こされることを明らかにした。NOTCH標的遺伝子であるMYCなどの発現は、ISGを発現する乳がん細胞株と共培養した線維芽細胞株において、ISGを発現しない乳がん細胞株と共培養した線維芽細胞株よりも高かった。Mycは、RNAポリメラーゼIII(POL3)に直接結合し、その転写活性を高める。活性化された間質線維芽細胞では、Mycの刺激を受けたPOL3が、5′ PPP末端をもつシグナル認識粒子RNAであるRNS7SL1を産生した。この非コードRNAの産生量は、通常はRIG-Iによる検知からRNAを守る、RNA結合タンパク質プールの結合能力を上回った。遮蔽されていないRNS7SL1が線維芽細胞からエクソソームに放出され、乳がん細胞のRIG-Iを活性化させた。リポソームと複合体を形成した非遮蔽RNS7SL1を、マウスの乳がん細胞異種移植片内に注射すると、腫瘍増殖がRIG-I依存的に促進された。さらに、非遮蔽RNS7SL1RNAは、健常ボランティアの血清エクソソームよりもがん患者の血清エクソソームに、またER陽性乳がん患者の血清エクソソームよりもTNBC患者の血清エクソソームに、豊富に存在した。このように、乳がん細胞が間質線維芽細胞を誘導して非遮蔽RNAをエクソソームに放出させ、この非遮蔽RNAが損傷関連分子パターンとして働き、乳がん細胞のRIG-Iを活性化させ、ISG発現を引き起こして腫瘍増殖を促進する。

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2017年8月1日号

Editor's Choice

裸のRNAでメッセージを送る

Research Article

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