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抗精神病薬から認知を保護する

Protecting cognition from antipsychotics

Editor's Choice

Sci. Signal. 26 Sep 2017:
Vol. 10, Issue 498, eaap9121
DOI: 10.1126/scisignal.aap9121

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Ibi, M. de la Fuente Revenga, N. Kezunovic, C. Muguruza, J. M. Saunders, S. A. Gaitonde, J. L. Moreno, M. K.Ijaz, V. Santosh, A. Kozlenkov, T. Holloway, J. Seto, A. García-Bea, M. Kurita, G. E. Mosley, Y. Jiang, D. J.Christoffel, L. F. Callado, S. J. Russo, S. Dracheva, J. F. López-Giménez, Y. Ge, C. R. Escalante, J. J. Meana, S.Akbarian, G. W. Huntley, J. González-Maeso, Antipsychotic-induced Hdac2 transcription via NF-κB leads to synaptic and cognitive side effects. Nat. Neurosci. 20, 1247-1259 (2017).  Google Scholar

抗精神病薬による認知障害を仲介する機構を阻害することによって、統合失調症患者の臨床転帰が改善する可能性がある。

要約
抗精神病薬は、統合失調症に伴う症状(幻覚や妄想など)の軽減に役立つが、患者の認知能力も低下させるため、患者は日常の活動が困難になる場合がある。マウスと患者の死後脳組織の両方において、Ibiらは、慢性的な抗精神病薬曝露により、前頭皮質のニューロンの核内で、転写因子である核内因子κB(NF-κB)の量が増加することを見出した。抗精神病薬クロザピンは、セロトニン5-HT2A 受容体の密度を低下させ、その結果として、NF-κB抑制因子であるκBα阻害因子(IκBα)をコードする遺伝子の転写を低下させた。続いて核内のNF-κBが、標的であるヒストン脱アセチル化酵素HDAC2をコードする遺伝子の発現を増加させ、HDAC2はシナプス機能と認知にきわめて重要な特徴である、細胞形態形成、ニューロン投射、シナプス構造に関与するタンパク質をコードする遺伝子のアセチル化と発現を低下させた。野生型マウスでは、長時間の抗精神病薬処理またはウイルスベクターを介する活性化NF-κB発現により、シナプスの構造と機能が変化し、記憶課題の成績が低下したが、Hdac2-/- マウスまたは恒常的活性化型のIκBαを発現するマウスでは、そのような変化は認められなかった。これらの結果により、統合失調症患者のQOLを改善するための、治療開発の標的が同定される。

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2017年9月26日号

Editor's Choice

抗精神病薬から認知を保護する

Research Article

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