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マイトーシス(有糸分裂)の代わりにネトーシス(好中球の細胞死)を促進する
Stimulating NETosis instead of mitosis
Sci. Signal. 05 Dec 2017:
Vol. 10, Issue 508, eaar6334
DOI: 10.1126/scisignal.aar6334
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
B. Amulic, S. L. Knackstedt, U. Abu Abed, N. Deigendesch, C. J. Harbort, B. E. Caffrey, V. Brinkmann, F. L.Heppner, P. W. Hinds, A. Zychlinsky, Cell-cycle proteins control production of neutrophil extracellular traps. Dev. Cell 43, 449-462.e5 (2017).
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J. Albrengues, R. W. Wysocki, L. Maiorino, M. Egeblad, Re-cyclin' cell-cycle components to make NETs. Dev. Cell 43, 379-380 (2017).
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細胞周期制御因子が好中球の細胞外トラップ産生を調節する。
要約
好中球は、大きすぎて貪食できない病原体に遭遇すると、特有の形態の細胞死(NETosis、ネトーシス)を起こし、クロマチンと結合した抗菌タンパク質を放出する。この好中球細胞外トラップ(NET)は、好中球の脱顆粒時に放出されるのと同じ抗菌因子を集結させ、動きを固定する。ネトーシスは、いずれも有糸分裂(mitosis、マイトーシス)中にも発生するマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達と核膜崩壊のほか、プロテアーゼであるエラスターゼの核内移行を引き起こし、ヒストンを切断し、クロマチンを脱凝縮させる活性酸素種(ROS)の産生によっても特徴づけられる。Amulicらは、ヒト好中球が、終末分化していて有糸分裂を起こせない細胞であるにもかかわらず、リンパ球を刺激して有糸分裂を開始させる植物由来のレクチンに誘導されてネトーシスを起こし、有糸分裂のいくつかの分子マーカーを蓄積し、中心体を複製することを見出した。有糸分裂マーカーと中心体の複製の誘導は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に感染したマウスの好中球と真菌性脳膿瘍のヒト患者由来の組織検体でも観察された。細胞周期阻害因子p21はNETの形成を抑制したが、in vitroでのヒトおよびマウスのいずれの好中球によるNET形成にも、サイクリン依存性キナーゼCDK6が必要であった。C. albicans敗血症モデルでは、Cdk6-/-マウスのほうが野生型マウスに比べて症状の発生が早く、死亡率が高く、真菌量が多かった。また、CDK4は好中球にも存在し、ネトーシス中に転写的に誘導されたことから、NET形成にも寄与している可能性が示唆される。これらの細胞周期制御因子がネトーシス誘導経路にどのように組み込まれているのかは、完全には特徴づけられなかったが、CDK4とCDK6の両方を標的とする薬理学的阻害剤は、エラスターゼの核移行を阻止したが、ROS産生や脱顆粒を妨げなかった。これらの知見は、関節リウマチ、ループス、アテローム性動脈硬化など、過剰なNET形成によって特徴づけられる炎症性疾患において、ネトーシスを制限するための治療戦略に影響する可能性がある(Albrenguesらによるコメンタリーも参照)。