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新たなつながり:ROSによって治癒する

New connections: Healed by ROS

Editor's Choice

Sci. Signal. 27 Mar 2018:
Vol. 11, Issue 523, eaat1605
DOI: 10.1126/scisignal.aat1605

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Hervera, F. De Virgiliis, I. Palmisano, L. Zhou, E. Tantardini, G. Kong, T. Hutson, M. C. Danzi, R. B.-T. Perry, C. X. C.Santos, A. N. Kapustin, R. A. Fleck, J. A. Del Río, T. Carroll, V. Lemmon, J. L. Bixby, A. M. Shah, M. Fainzilber, S. Di Giovanni, Reactive oxygen species regulate axonal regeneration through the release of exosomal NADPH oxidase 2 complexes into injured axons. Nat. Cell Biol. 20, 307-319 (2018).
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E.-M. Krämer-Albers, Exosomes deliver ROS for regeneration. Nat. Cell Biol. 20, 225-226 (2018).
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A. Horn, J. H. Van der Meulen, A. Defour, M. Hogarth, S. C. Sreetama, A. Reed, L. Scheffer, N. S. Chandel, J. K.Jaiswal, Mitochondrial redox signaling enables repair of injured skeletal muscle cells. Sci. Signal. 10, eaaj1978(2017).
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S. T. Cooper, Ca2+and mitochondrial ROS: Both hero and villain in membrane repair. Sci. Signal. 10, eaao3795(2017).
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Nox2またはミトコンドリアによって産生されるROSが、哺乳類の組織修復経路にきわめて重要な役割を果たす。

要約

無制限の酸化ストレスは細胞と組織を損傷するが、モデル生物において、活性酸素種(ROS)の局所的産生は創傷治癒反応に関与する。哺乳類組織修復経路における、Nox2(NADPHオキシダーゼ2)複合体またはミトコンドリアによって産生されるROSの重要な役割が、2報の論文で説明されている。1報目では、Herveraらが(Krämer-Albersも参照)、マウスの末梢神経軸索切断により、それに続く脊髄損傷後の後根神経節(DRG)からの神経突起伸長が促進される仕組みを検討した。坐骨神経軸索切断後、マクロファージからNox2含有エクソソームが放出され、DRGに取り込まれた。これらのエクソソームは細胞体に輸送され、その結果、ホスファターゼ・テンシン・ホモログの酸化と不活性化、PI3K/Aktシグナル伝達の刺激、DRG伸長が生じた。抗酸化剤NACを坐骨神経に投与すると、脊髄損傷後のDRG伸長が制限された。2報目では、Hornらが(Cooperも参照)、機械的に誘発された細胞膜損傷を、細胞外Ca2+の流入が細胞死を引き起こすレベルに達する前に、細胞がどのようにして修復するのかを検討した。マウス筋細胞とヒト非筋細胞において、Ca2+がミトコンドリアに取り込まれるとROS産生が開始され、それによって、アクチン重合と創傷閉鎖が活性化した。ex vivoで運動させたマウス筋肉において、ミトコンドリアによって産生されたROSを消失させると、筋線維の損傷が大きくなり、筋力が低下した。抗酸化剤は栄養補助食品として人気が高いが、いずれの論文でも、抗酸化剤でROS産生を包括的に消失させると、状況特異的な有害な作用が生じる可能性があり、そのような有害性と、もたらされうる有益性のバランスを取らなければならないことが示されている。

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2018年3月27日号

Editor's Choice

新たなつながり:ROSによって治癒する

Research Article

δカテニンのパルミトイル化は感覚ニューロンにおいてキネシンに媒介されるNav1.6の膜輸送を促進して神経障害性疼痛を悪化させる

キナーゼS6K1のp85アイソフォームは分泌型腫瘍性タンパク質として働き細胞遊走と腫瘍増殖を促進する

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