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小胞体ストレスががんを阻害するとき
When ER stress is bad for cancer
Sci. Signal. 01 May 2018:
Vol. 11, Issue 528, eaau0066
DOI: 10.1126/scisignal.aau0066
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
C. Rubio-Patiño, J. P. Bossowski, G. M. De Donatis, L. Mondragón, E. Villa, L. E. Aira, J. Chiche, R. Mhaidly, C.Lebeaupin, S. Marchetti, K. Voutetakis, A. Chatziioannou, F. A. Castelli, P. Lamourette, E. Chu-Van, F. Fenaille, T. Avril, T.Passeron, J. B. Patterson, E. Verhoeyen, B. Bailly-Maitre, E. Chevet, J.-E. Ricci, Low-protein diet induces IRE1α-dependent anticancer immunosurveillance. Cell Metab. 27, 828-842.e7 (2018).
Google Scholar
D. R. Green, Eating the beast: Dietary protein and anticancer immunity. Cell Metab. 27, 703-705 (2018).
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低タンパク質食は複数の種類のがんで腫瘍の免疫監視を亢進する。
要約
カロリー制限などの食事制限は、腫瘍の免疫監視を亢進するが、患者で実践するのは難しいこともある。Rubio-Patiñoら(Greenのコメンタリーも参照)は、腫瘍の免疫監視に対する食事制限の有益作用を、タンパク質の摂取量を制限した食事で模倣できることを見出した。マウスに低タンパク質食を与えたところ、リンパ腫、結腸直腸がん、メラノーマの増殖が抑制され、生存率が上昇したが、等カロリーの低炭水化物食ではそのような作用は認められなかった。これらの作用は、細胞傷害性CD8+ T細胞によって媒介された。低タンパク質食を常食させたマウス由来のT細胞は、通常食または低炭水化物食のマウス由来のT細胞に比べて、同系腫瘍細胞を死滅させる効果がより高かった。さらに、低タンパク質食のマウスのほうが、腫瘍内のナチュラルキラー細胞とCD3+CD8+ Tリンパ球の数がより多かった。低タンパク質食は、腫瘍細胞において変性タンパク質応答(UPR)と呼ばれるある種の小胞体(ER)ストレスを誘導し、UPRエフェクターIRE1αとRNAセンサーRIG-Iを活性化させた。ERストレス阻害薬またはIRE1α阻害薬でマウスを処置する、あるいは結腸直腸がん細胞のIRE1αまたはRIG-IをCRISPR/Cas9で遺伝的に除去すると、腫瘍負荷に対する低タンパク質食の有益作用は阻害された。がんゲノムアトラス(TCGA)のデータセットでは、IRE1αの活性化に関連する遺伝子シグネチャは、3つの異なる種類のがんにおいて、T細胞マーカーの発現増加と相関した。著者らは、腫瘍の免疫監視に対する食事の影響の決定づけには、カロリー値よりも多量栄養素の割合のほうが重要であると結論づけている。