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Treg細胞がTreg細胞であるために

How Treg cells stay true

Editor's Choice

Sci. Signal. 22 May 2018:
Vol. 11, Issue 531, eaau2250
DOI: 10.1126/scisignal.aau2250

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

E. Cuadrado, M. van den Biggelaar, S. de Kivit, Y.-y. Chen, M. Slot, I. Doubal, A. Meijer, R.A.W. van Lier, J. Borst, D. Amsen, Proteomic analyses of human regulatory T cells reveal adaptations in signaling pathways that protect cellular identity. Immunity 48, 1046-1059.e6 (2018).
Google Scholar

ヒトTreg細胞は、タンパク質発現特性が変化しても細胞としての同一性を維持している。

要約

制御性T(Treg)細胞は、エフェクターT細胞の活性を調節するFoxP3+ CD4+ T細胞サブセットを構成する。Treg細胞は病気の原因となる炎症を抑制し、自己免疫疾患を予防し、外傷の治癒を促進する。Treg細胞はこのように重要な機能を果たすので、FoxP3の発現を不安定化する可能性のある炎症シグナルに直面しても細胞としての同一性を維持することが重要である。通常のT細胞と同様に、Treg細胞はきわめて多様であり、ナイーブサブセットとエフェクターサブセットに分類できる。ヒト血液中のCD4+ TregサブセットとエフェクターT細胞サブセットのプロテオームおよびトランスクリプトームシグネチャーを比較することにより、Cuadradoらは、トランスクリプトームシグネチャーのみからは予測できなかったTreg細胞特異的なコアタンパク質シグネチャーを同定した。さらに著者らは、高度に抑制性のエフェクターTreg細胞では、CD4+ T細胞サブセットに比べて、抗原と炎症性サイトカインの検出に関与する主要なシグナル伝達タンパク質、なかでも核因子κB(NF-κB)とJAK-STATシグナル伝達経路の構成要素の量が少ないことを見出した。これら構成要素のうちの1つである転写因子STAT4を強制的に発現させると、炎症性サイトカインであるインターフェロンα(IFN-α)の存在下でT細胞受容体の活性化後に、Treg細胞においてFoxP3が失われたことから、炎症性シグナル伝達の離調(detuning)は、Treg細胞が同一性を維持する方法の1つとなっている可能性がある。注目すべきことに、CD4+ T細胞サブセットにおけるRNAとタンパク質の存在量の変化は、代謝、細胞分裂、細胞遊走に関連するKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG、京都遺伝子ゲノム百科事典)経路に関してはよく相関したが、細胞シグナル伝達経路に関するRNAとタンパク質のデータセットはあまり一致しなかった。全体としてこの研究は、Treg細胞が細胞としての同一性をどう維持しているのかを理解するための豊富な情報源を提供しており、細胞が環境に応答するために使用する経路のタンパク質レベルでの解析の重要性を強調している。

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2018年5月22日号

Editor's Choice

Treg細胞がTreg細胞であるために

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