宿主防御の手痛い停滞

A painful takedown of host defenses

Editor's Choice

Sci. Signal. 12 Jun 2018:
Vol. 11, Issue 534, eaau4230
DOI: 10.1126/scisignal.aau4230

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

F. A. Pinho-Ribeiro, B. Baddal, R. Haarsma, M. O'Seaghdha, N. J. Yang, K. J. Blake, M. Portley, W. A. Verri, J. B.Dale, M. R. Wessels, I. M. Chiu, Blocking neuronal signaling to immune cells treats Streptococcal invasive infection. Cell 173, 1083-1097.e22 (2018).
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K. J. Tracey, Neurons are the inflammatory problem. Cell 173, 1066-1068 (2018).
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肉食性細菌(人喰いバクテリア)は、痛覚ニューロンによる好中球抑制性ペプチドの放出を誘導することによって宿主防御を無効にする。

要約

壊死性筋膜炎の高死亡率は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)などのグラム陽性菌による、高侵襲性で管理の難しい皮下組織と下部の筋膜の破壊が原因である。患者が経験する激しい痛みは、組織の損傷度とは不釣合なほどであり、この疾患の重症度と相関する。Pinho-Ribeiroらは(Traceyによるコメンタリーも参照)、S. pyogenesによって誘発される痛みと壊死性筋膜炎の発症原因との関係を調べた。ヒト感染患者から単離されたS. pyogenes株に感染させたマウスでは、炎症とは独立した疼痛反応、機械的痛覚過敏、熱痛覚過敏が感染部位で認められた。S. pyogenesは、カチオンチャネルTRPV1陽性の侵害受容ニューロンのCa2+シグナル伝達を活性化した。この活性化には膜孔形成毒素ストレプトリジンS(SLS)が必要であり、活性化によって神経ペプチドCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出された。CGRPで処理すると、好中球によるS. pyogenesの死滅が抑制された。また、SLSはS. pyogenes感染によって誘発される疼痛および機械的痛覚過敏にも必要であった。マウスのTRPV1陽性ニューロンを遺伝的または薬理学的に消失させると、疾患の進行が抑制され、回復が促進された。こうした作用は、ボツリヌス神経毒A(神経ペプチドの放出を阻止する)またはCGRP受容体拮抗薬の皮下注射によって再現された。これらの結果は、侵害受容ニューロンの活性化を抑制することが、壊死性筋膜炎の進行を抑制し、手足の切断のような思い切った処置の必要性を軽減させるための治療戦略となる可能性を示唆している。

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2018年6月12日号

Editor's Choice

宿主防御の手痛い停滞

Research Article

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