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パーキンソン病 忘れにくい運動障害

PARKINSON'S DISEASE:
A Movement Disorder That's Hard to Forget

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 181, pp. tw174, 6 May 2003.

B. Picconi, D. Centonze, K. Hakansson, G. Bernardi, P. Greengard, G. Fisone, M. A. Cenci, P. Calabresi, Loss of bidirectional striatal synaptic plasticity in L-DOPA-induced dyskinesia. Nat. Neurosci. 6, 501-506 (2003).
S. Dunnett, L-DOPA, dyskinesia and striatal plasticity. Nat. Neurosci. 6, 437-438 (2003).

要約 : Picconiらは、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)によるジスキネジーの出現を研究し、これらの異常な不随意運動が、異常な形の運動学習であるという仮説を支持する証拠を得た。パーキンソン病(PD)は、線条体に投射するドーパミン作動性ニューロンの変性によって生じ、ドーパミン前駆体L-DOPAにより最も有効に治療できる。L-DOPAは、最初はPDの多くの運動症状を軽減するが、長期間におよぶ治療は、ジスキネジーなどの重症の副作用を引き起こす。Picconiらは、パーキンソン病のラットモデルにおいてドーパミン作動性ニューロンの病変部位に対して6-ヒドロキシドーパミンを使用し、運動に対する治療用量のL-DOPAの効果を評価した。L-DOPAでの処置後、約半数のラットが病変によって生じた運動障害から回復した。残りのラットはジスキネジーを生じたため、運動能力が実際に悪化した。ドーパミン作動性入力に依存した、グルタミン酸作動性シナプスの高頻度刺激後の線条体の長期増強(LTP)は、病変のあるラット由来の脳切片においては明らかではなかったが、ジスキネジーを生じたラットおよびジスキネジーを生じていないラットの双方において、L-DOPAの長期投与によって回復した。L-DOPA投与ラットにおいては、低頻度刺激によって、ジスキネジーを生じていないラットの線条体のLTPが元に戻った(「脱長期増強(depotentiation)」)が、ジスキネジーを生じたラットでは元に戻らなかった。薬理学的分析により、脱長期増強がホスファターゼ活性化に依存すること、およびD1ドーパミンレセプターの刺激によって遮断され得ることが示された。さらに、ジスキネジーを生じたラットでは、プロテインホスファターゼ1を阻害する線条体のDARPP-32(ドーパミンおよび環状アデノシン一リン酸により調節される32kDaのリン蛋白質)のリン酸化が増加していた。したがって、L-DOPAによるジスキネジーの出現は、D1経路の活性化によって仲介される線条体のLTPの異常な持続を反映していると考えられる。「学習した」異常な運動は、学習しなかったことにはできなかった。Dunnettは、本研究の意義について述べている。

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