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癌:有糸分裂調節因子は運動性を獲得する

CANCER:
Mitotic Regulator Gets Moving

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Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 185, pp. tw206, 3 June 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.185.tw206]

要約 : サイクリン依存性キナーゼCdc2は、通常は、有糸分裂のプロモーターと考えられている。Manesらは、細胞移動の調節におけるCdc2の新しい役割の可能性について述べている。αvβ3インテグリンの発現は、一部のガン細胞の移動性および侵襲性の性質に関係している。従って、Manesらは、αvβ3インテグリンを過剰発現している前立腺ガン細胞株中で発現の増大を示した遺伝子を単離し、Cdc2を同定した。Cdc2の異所性発現は、複数の細胞株の移動性を増大させた。逆に、ドミナントネガティブの発現または薬理学的阻害因子を用いてCdc2活性を阻害すると、培養細胞の移動が減少した。HeLa細胞中では、Cdc2はラメリポディウムに存在した。著者らは、可能性のあるCdc2の標的としてカルデスモンを提案している。カルデスモンは、膜の波状部分(membrane ruffles)に結合しCdc2の基質となると考えられる、アクチン結合タンパク質である。前立腺ガンは、多くの場合、αvβ3インテグリンの発現の増大を示し、前立腺ガンでのCdc2の発現の増大はより侵襲性の高いガンと相関している。このように、著者らは、この例におけるCdc2の重要な作用が、細胞増殖促進においてさらに予想される役割ではなく、むしろ移動と侵襲の促進を介して生じうることに注目している。

T. Manes, D.-Q. Zheng, S. Tognin, A. S. Woodard, P. C. Marchisio, L. R. Languino, vs3 integrin expression up-regulates Cdc2, which modulates cell migration. J. Cell Biol. 161, 817-826 (2003).

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