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核受容体:ハエは新しい核受容体シグナル伝達機構を明らかにする

NUCLEAR RECEPTORS:
Flies Reveal New Nuclear Receptor Signaling Mechanism

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Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 187, pp. tw226, 17 June 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.187.tw226]

要約 : エクジステロイドは、昆虫の発達と変態を調節するうえで重要な役割を持つホルモンである。哺乳動物のステロイドホルモンと同様に、エクジステロイドは、核受容体であるエクジソン受容体(EcR)を介して転写調節を行う。EcRは、別の核受容体ファミリーの一員である脊椎動物のレチノイドX受容体(RXR)と類縁の、Ultraspiracle(USP)とヘテロ二量体を形成する。しかし、EcRが、昆虫の血リンパ中に見られるエクジソンおよび類縁のエクジステロイドの全作用を媒介するとは考えられない。従って、Bakerらは、USPとヘテロ二量体を形成する昆虫の核受容体DHR38の機能を検討した。著者らは、性質がよくわかっているRXRをUSPの代わりにパートナーとして使用するレポーターシステムを構築し、複合体の転写活性が種々のエクジステロイドに応答して活性化されることを示した。DHR38とRXRとの複合体の活性化には、両方の受容体のリガンド誘導型活性化が必要であり、DHR38とUSPとの複合体の場合も同様であろうと考えられた。特に驚くべきことは、DHR38が、エクジステロイドに応答するにもかかわらず、リガンドには直接結合しないと考えられることを明らかにした実験であった。タンパク質のX線結晶構造で、核受容体において通常保存されているリガンド結合ポケットと活性化補助因子結合部位が、DHR38では機能していない可能性が高いことが確認された。著者らは、転写活性化部位で受容体と共に作用する補因子が、エクジステロイドに対する感受性を与えると推測している。DHR38は、哺乳動物のオーファン核受容体のサブファミリー(NGFI-Bサブファミリー)と類縁関係にあるため、ハエのDHR38によって明らかにされる活性化についての新しいパラダイムは、脊椎動物の核受容体によるシグナル伝達に関しても重要性を持つ可能性がある。

K. D. Baker, L. M. Shewchuk, T. Kozlova, M. Makishima, A. Hassell, B. Wisely, J. A. Caravella, M. H. Lambert, J. L. Reinking, H. Krause, C. S. Thummel, T. M. Willson, D. J. Mangelsdorf, The Drosophila orphan nuclear receptor DHR38 mediates an atypical ecdysteroid signaling pathway. Cell 113, 731-742 (2003).

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