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脱リン酸化酵素 シグナルの持続期間

PHOSPHATASES:
Signal Duration

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 201, pp. tw367, 23 September 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.201.tw367]

要約 : リン酸化に関与する多くのシグナル伝達カスケードでは、キナーゼの作用に負に働く脱リン酸化酵素がある。しかし、脱リン酸化酵素は、単にシグナルを終結させる上で必要であるだけでなく、実際に細胞応答の決定にも関与している可能性がある。Maileらは、脱リン酸化酵素SHP-2が、インシュリン様増殖因子受容体(IGF-1R)に会合することが、平滑筋細胞(SMC)がIGF-1に応答するのに不可欠であることを示している。SHP-2の会合は間接的で、膜貫通型タンパク質であるIAP(インテグリン結合タンパク質)とSHPS-1(Src相同ドメインを有したプロテインチロシンホスファターゼ基質-1 )との相互作用が必要であった。IAPとSHPS-1との相互作用を、抗体やIAP変異体の過剰発現によって阻害すると、SHPS-1のリン酸化ならびに、SHP-2のSHPS-1への会合が減少した。また、これらの処理によって、IGF-1Rリン酸化の持続期間も増加していた。IAP-SHPS-1相互作用を妨害することでSHP-2の会合を抑制すると、マイトジェン活性化プロテインキナーゼのリン酸化や、細胞増殖、IGF-1に応答した細胞遊走が阻害された。SMCの血小板由来増殖因子に対する応答は、IAPとSHPS-1との相互作用の阻害によって影響は受けなかった。したがって、脱リン酸化酵素は、キナーゼカスケードを終結させる上で重要な役割を担っているだけでなく、増殖因子に対する細胞応答にも関与している。

L. A. Maile, J. Badley-Clarke, D. R. Clemmons, The association between integrin-associated protein and SHPS-1 regulates insulin-like growth factor-I receptor signaling in vascular smooth muscle cells. Mol. Biol. Cell 14, 3519-3528 (2003).

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