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神経変性 プリオンがERストレスを誘発する

NEURODEGENERATION:
Prions Stress Out the ER

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 205, pp. tw409, 21 October 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.205.tw409]

要約 : プリオンタンパク質(PrPC)の構造変化によって、神経毒性を持つPrPScが産生され、これが、伝達性海面状脳症に関与していると考えられている。Hetzらは、N2A神経芽腫細胞をPrPScで処理することで、アポトーシスおよびカスパーゼ-3の活性化は誘発されるが、カスパーゼ-8やカスパーゼ-1の活性化は誘発されないことを突き止めた。PrPScは、小胞体(ER)からの放出に起因する細胞内カルシウム濃度[Ca2+]iを上昇させる。ただし、[Ca2+]i濃度の上昇は、細胞外カルシウムが存在しない場合にみられ、この濃度上昇は、細胞をERカルシウムポンプ阻害剤であるタプシガルジンで処理することにより抑制された。PrPScの処理により、ERに局在するカスパーゼ-12が活性化され、ERシャペロンであるGrp94、Grp78、Grp58の発現が増加したことから、PrPScはERストレス応答を誘発すると考えられた。PrPScを始めとするERストレス誘発因子の毒性効果は、カスパーゼ-12のドミナントネガティブ変異体を発現している細胞では減少していた。N2A細胞をプリオンタンパク質に感染させた場合(外因的に毒性タンパク質で処理するのではなく、内因的にPrPScを発現させた)、休止状態では細胞の生存度は減少しなかったものの、感染細胞はERストレス誘発因子に対する感受性が高く、非感染細胞と比較して生存度が減少していた。プリオン(139Aスクレイピー)に感染したマウスでは、活性型カスパーゼ-12が脳で検出されたほか、カスパーゼ-12活性が最も高い脳の部位では、ニューロン死も最も多く起こっていた。さらに、感染マウスの脳ではERシャペロンの一部に増加がみられた。クロイツフェルトヤコブ病患者の脳組織を、患者の死後解析したところ、ERシャペロンおよび活性型カスパーゼ-12、ならびにプロテアーゼ耐性PrPScが増加していた。したがって、ERストレス応答はプリオンの毒性に重要な役割を担っていると考えられ、以上の結果により、この経路を薬理学的介入の標的とすることができる可能性が示唆される。

C. Hetz, M. Russelakis-Carneiro, K. Maundrell, J. Castilla, C. Soto, Caspase-12 and endoplasmic reticulum stress mediate neurotoxicity of pathological prion protein. EMBO J.22, 5435-5445 (2003).

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