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知覚 遺伝子工学的に作り出された甘党マウス

SENSORY PERCEPTION:
Mice with Engineered Sweet Tooth

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 207, pp. tw426, 4 November 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.207.tw426]

要約 : 味覚は、少なくとも部分的には、舌の味蕾にある細胞表面の受容体により検出される。T1Rと呼ばれるGタンパク質結合受容体のファミリーは、甘味および旨味(アミノ酸に関連する味質で、特にヒトではグルタミン酸一ナトリウムを指す)の検出に関与すると考えられている。Zhaoらは、3種類のT1R受容体(T1R1、T1R2、T1R3)をそれぞれ欠損したノックアウトマウスを解析し、哺乳類の味覚のいくつかの基礎的な側面を解明した。研究者らは、味覚応答の観察に、味覚受容体細胞に結合する神経の活動電位の記録、または舐める、摂取するといった嗜好を観察する行動試験を用いた。旨味は、T1R1およびT1R3から成るヘテロ受容体によって仲介され、いずれの受容体が欠けてもアミノ酸に対する生理反応や行動反応は急激に減少した。同様に、T1R2およびT1R3が結合すると、甘味の知覚が生じることも示された。事実、ヒトT1R2受容体をマウスに導入すると、そのマウスは、通常ヒトには検出されるがげっ歯類には検出されない甘味化合物に引き寄せられた。著者らは最後に、T1R2を発現する細胞が、T1R2のようなシグナルを発生するが合成リガンドに対して応答するような変性オピオイド受容体の発現を急速に誘導した場合、マウスはオピオイドリガンドにより甘味が誘起されたかのように振舞うことを示した。以上から、味覚は、複数の味覚細胞型に分布する受容体により産生されたシグナルが複雑に統合された結果としてではなく、舌上にある専用の細胞から固有のシグナルが伝達された結果として生じると考えられる。

G. Q. Zhao, Y. Zhang, M. A. Hoon, J. Chandrashekar, I. Erlenbach, N. J. P. Ryba, C. S. Zuker, The receptors for mammalian sweet and umami taste. Cell 115, 255-266 (2003).

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