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レドックス制御:チオレドキシンおよびその類縁分子は、特異的な制御因子である

REDOX REGULATION:
Thioredoxin and Its Relatives Are Specific Regulators

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 218, pp. tw37, 3 February 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2182004TW37]

要約 : 活性酸素種の形成は、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)により誘発される経路を含む、多くのシグナル伝達過程に関与している。チオレドキシン(Trx)およびチオレドキシン関連タンパク質(TRP)は、細胞のレドックス制御に寄与するジスルフィド還元酵素である。その還元型において、これらの酵素は、基質タンパク質のジスルフィド結合を還元できる。今週の2本の論文において、JeongらはTRP14の活性を特徴付け、過剰発現やRNA干渉による欠失を用いて、TNF-αシグナル伝達におけるTRP14およびTrx1の役割を比較した。Trx1やTRP14を欠失させた細胞における、TNF-α応答性のMn2+依存性スーパーオキシドジスムターゼ発現(NF-κB標的遺伝子)の増加により示されるように、両タンパク質はNF-κBシグナル伝達を阻害する。IκBαのリン酸化および分解の速度や程度も、Trx1欠失細胞やTRP14欠失細胞で増加していた。また、Trx1やTRP14の欠失は、タンパク質合成を阻害したTNF-α活性化細胞において、カスパーゼ切断の加速および細胞死の亢進を生じさせた。さらに興味深い点は、TRP14およびTrx1を欠失させた後に認められた差異であった。Trx1を欠失させても、2種類のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ファミリーメンバーであるJNKおよびp38のリン酸化の時間経過や程度は影響されなかったのに対し、TRP14を欠失させたところ、これら2種類の酵素のリン酸化の時間経過は変化しなかったものの、そのリン酸化の程度が増加した。もう一つの差異は、TRP14では生じなかった、Trx1によるMAPKキナーゼASK1の相互作用および阻害であった。In vitro基質トラップ法により、LC8(ダイニンのL鎖で、IκBαおよびBcl-2メンバーであるBimと相互作用することも知られている)、コフィリン、リボソームタンパク質L30が、TRP14の基質である可能性があるとして同定された。遺伝子導入細胞では、LC8およびTRP14は、TNF-αや過酸化物での処理に応じて複合体を形成した。以上より、タンパク質のチオレドキシンファミリーは、レドックス制御において特異的な制御役を果たしていると考えられる。

W. Jeong, T.-S. Chang, E. S. Boja, H. M. Fales, S. G. Rhee, Roles of TRP14, a thioredoxin-related protein in tumor necrosis factor-a signaling pathways. J. Biol. Chem. 279, 3151-3159 (2004).

W. Jeong, H. W. Yoon, S.-R. Lee, S. G. Rhee, Identification and characterization of TRP14, a thioredoxin-related protein of 14 kDa: new insights into the specificity of thioredoxin function. J. Biol. Chem. 279, 3142-3150 (2004).

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