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細胞生物学 可溶性アデニリルシクラーゼは核cAMPカスケードを引き起こす

CELL BIOLOGY:
Soluble Adenylyl Cyclase Triggers a Nuclear cAMP Cascade

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 221, pp. tw67, 24 February 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2212004TW67]

要約 : 可溶性アデニリルシクラーゼ(sAC)は、最近同定された非膜貫通型酵素で、さまざまな細胞内領域に局在化し、炭酸水素に応答してアデノシン3’,5’-一リン酸(cAMP)を産生する。炭酸水素は代謝の副産物として産生され、その濃度は細胞内pHの変化に応じて変化する。Zippinらは、プロテインキナーゼA(PKA)の制御サブユニットであるsAC、ならびにPKAの標的であるcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)のリン酸化体が、肝臓切片において肝細胞のサブセットの核に共に局在化していることを見出した。培養細胞株(Huh7細胞)を炭酸水素に曝露したところ、CREBリン酸化をGタンパク質共役受容体活性化により活性化した場合に比べ、より早くCREBリン酸化が活性化された。HeLa細胞について細胞分画研究を行ったところ、CREB、sAC、PKA制御サブユニットは、核分画に存在していることが明らかになった。HeLa核分画におけるAC活性は、sAC選択的阻害剤により阻害された。核AC活性は、ACの膜貫通体を活性化するフォルスコリンにより活性化されなかったが、核AC活性は炭酸水素に応答して上昇した。分離核のサブセットは、cAMP、炭酸水素のいずれかを添加するとCREBリン酸化の増加を示したが、後者はsAC阻害剤を添加することで阻害することができた。膜貫通型ACにより産生されるcAMPはホスホジエステラーゼ活性により制御されると考えられるため、sACは細胞に対し、膜貫通型ACを活性化する細胞外刺激とは独立の内因性細胞シグナルに応答して、cAMPシグナル伝達を利用する機構として働いている可能性がある。

J. H. Zippin, J. Farrell, D. Huron, M. Kamenetsky, K. C. Hess, D. A. Fischman, L. R. Levin, J. Buck, Bicarbonate-responsive "soluble" adenylyl cyclase defines a nuclear cAMP microdomain. J. Cell. Biol. 164, 527-534 (2004).

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