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免疫学 アネルギーに分解される

IMMUNOLOGY:
Degraded into Anergy

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 223, pp. tw84, 9 March 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2232004TW84]

要約 : T細胞は、刺激に対して正に応答することも不活化されることもあり、それによりアネルギーと呼ばれる状態が生じる。アネルギーは、身体が自己抗原を認識し、自己免疫反応を開始しないために必要である。カルシウムは、T細胞応答の主要な制御因子であり、カルシウム活性化ホスファターゼであるカルシニューリンおよび転写因子NFATの活性化を介して遺伝子発現の活性化を行う。Heissmeyerらは、T細胞をイオノフォアに曝露するか共刺激性シグナル不在下において刺激することでカルシウムを持続的に上昇させると、ユビキチンを介する分解に関与する遺伝子を含むいくつかの遺伝子の発現の上昇を伴ったアネルギー状態が生じることを示した。これらの遺伝子には、E3ユビキチンリガーゼであるItch、Cbl-b、GRAIL、ならびにエンドソーム選別複合体ESCRT-1のユビキチン結合タンパク質であるTsg101が含まれていた。アネルギー状態となった細胞では、ホスホリパーゼC-γ1(PCL-γ1)、プロテインキナーゼCアイソフォームθ(PKC-θ)、グアノシン三リン酸活性化タンパク質Ras-GAPのタンパク量が減少していた。これらのタンパク質の減少は、カルシニューリン阻害剤であるシクロスポリンAにより阻害された。この減少が最も顕著となったのは、細胞にアネルギーを誘導させる処理を行った後、活性化シグナルに曝露した場合であった。PLC-γ1およびPKC-θは、アネルギー状態の細胞においてユビキチン化されることが確認されたが、プロテアソームを阻害してもそれらの安定性は増強されなかった。このことは、Tsg101遺伝子の発現の誘導と一致しており、この遺伝子の産物は、モノユビキチン化されたタンパク質をリソソームに運搬し分解する過程を仲介する。興味深いことに、アネルギー状態のT細胞を抗原提示細胞に曝露した場合、形成される免疫学的シナプスは不安定であった。この不安定性は、PLCを薬理学的に阻害することで正常T細胞においても再現することができた。ItchまたはCbl-bを欠損させたマウスのT細胞はアネルギー状態になることはできず、アネルギー状態を生じさせるような処理を行ったところ、非常に安定した免疫学的シナプスを形成した。

V. Heissmeyer, F. Macian, S.-H. Im, R. Varma, S. Feske, K. Venuprasad, H. Gu, Y.-C. Liu, M. L. Dustin, A. Rao, Calcineurin imposes T cell unresponsiveness through targeted proteolysis of signaling proteins. Nat. Immunol. 5, 255-265 (2004).

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