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シグナルのクロストーク 経路間コネクタとしてのPKB

SIGNAL CROSSTALK:
PKB as Interpathway Connector

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 227, pp. tw122, 6 April 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2272004tw122]

要約 : トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)のアポトーシス誘導作用は、インスリン受容体などの受容体チロシンキナーゼ増殖因子受容体からのシグナルにより拮抗される。今週の2本の論文では、インスリンのこうした作用はプロテインキナーゼB(PKB、別名Akt)と転写活性化因子Smad3の直接的相互作用を介することが示されている。奇妙なことに、このPKBの作用は酵素のキナーゼ活性を必要とせず、むしろ物理的相互作用およびその結果生じるSmad3の核外への隔離に起因するようである。各種の哺乳類細胞株において、ConeryらとRemyらは、Smad3とPKBとが相互作用することと、細胞をインスリンで処理するとタンパク質の会合が促進されるのに対しTGF-βで処理すると阻害されることを示した。細胞に導入されたSmad3に依存する転写は、細胞にPKBを併せて導入すると阻害された。しかし、PKBの触媒不活性な変異体もSmad3依存性転写やTGF-β誘導性アポトーシスを阻害したことから、PKBのキナーゼ活性は必要ではないようであった。培養細胞の免疫染色により、インスリン処理後、PKBは形質膜に局在化することが確認された。Smad3は通常細胞質内に留まっているが、TGF-βで処理した細胞では核に移行する。しかし、インスリンに曝露した細胞では、Smad3はPKBとともに細胞膜に局在化し、核には蓄積されなかった。PKBの阻害作用は特異的であるようで、TGF-βは依然としてSmad2の活性化を介して細胞増殖を阻害することができた。実際、Coneryらは、Smad3量のPKB量に対する割合が、細胞が細胞増殖を阻害したり細胞死を受けたりすることによりTGF-βに応答するか否かを決定するという証拠を提供している。

A. R. Conery, Y. Cao, E. A. Thompson, C. M. Townsend Jr, T. C. Ko, K. Luo, Akt interacts directly with Smad3 to regulate the sensitivity to TGF-s-induced apoptosis. Nat. Cell Biol. 6, 366-372 (2004).

I. Remy, A. Montmarquette, S. W. Michnick, PKB/Akt modulates TGF-s signalling through a direct interaction with Smad3. Nat. Cell Biol. 6, 358-365 (2004).

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