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病原性 Racを介してカスパーゼ1を罹患させる

PATHOGENICITY:
Plaguing Caspase-1 Through Rac

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 237, pp. tw211, 15 June 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2372004TW211]

要約 : 最も悪名高い細菌(Y. pestis)に属するエルシニア(Yersinia)菌は、腺ペストを引き起こすが、この属の細菌は、Yopタンパク質を標的細胞に注入する。個々のYopのエフェクターは、協力して食作用を阻害し、炎症反応を抑制するが、非常に特異的な効果を持つ。たとえば、YopPは、核因子NF-κBの活性化、すなわち炎症誘発性サイトカインの転写を阻害するのに対して、YopEは、RhoファミリーGTPaseのグアノシン三リン酸(GTPase)活性化タンパク質(GAP)として機能することにより、食作用に関与する細胞骨格の再編成を阻害する。Schotteらは、YopPを欠損したY. enterocoliticaに感染させたMf4/4マウスマクロファージは、野生型細菌に感染したマクロファージよりもインターロイキン6(IL-6)の分泌量が多かったが、IL-1βの分泌量は変わらなかったことに注目し、前者のマクロファージにおいて、proIL-1βの細胞質内濃度が増加していることを明らかにした。著者らは、さまざまなYopを欠損したY. enterocolitica株を用いて、YopEは、GAP活性に依存する効果であるproIL-1βプロセシングを阻害することを示した。ProIL-1βは、カスパーゼ1によりIL-1βに変換される、そして、プロカスパーゼ1およびpro-IL-1βをトランスフェクトしたHEK293T細胞において、野生型のYopEはプロカスパーゼ1の自己触媒的プロセシングおよびproIL-1βのプロセシングを阻害したが、触媒不活性な変異体はそれらを阻害しなかった。恒常的活性型のRac1(RhoファミリーGTPase)を発現している細胞では、プロカスパーゼ1の自己タンパク質分解およびIL-1βの分泌が増加していたのに対して、ドミナントネガティブなRac1やRhoファミリーGTPase活性を薬理学的に阻害した場合、いずれも抑制された。Rac1によるカスパーゼ1の活性化は、アクチン細胞骨格の組織化に対する影響力に依存し、アダプタータンパク質Ascが介するカスパーゼ1のオリゴマー形成に関与していた。以上のデータは、Yopタンパク質の協同的作用を明示し、カスパーゼ1の活性化におけるRac1の意外な役割を明らかにするものである。

P. Schotte, G. Denecker, A. Van Den Broeke, P. Vandenabeele, G. R. Cornelis, R. Beyaert, Targeting Rac1 by the Yersinia effector protein YopE inhibits caspase-1-mediated maturation and release of interleukin-1b. J. Biol. Chem. 279, 25134-25142 (2004).

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