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TRPチャネル TRPを膜へと運ぶ

TRP CHANNELS:
Taking a TRP to the Membrane

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 245, pp. tw283, 10 August 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2452004tw283]

要約 : Bezzeridesらは、チャネルの移行が関与する興味深いメカニズムを介して、成長因子が神経突起の伸長を誘導するシグナル伝達経路を解明した。カルシウムは、未同定のチャネル群を介して成長円錐に流入し、神経突起の伸長を制御するカルシウム波を誘導する。それらのチャネルの候補は、大部分が陽イオン非選択的チャネルから成るTRP(transient receptor potentialの略)ファミリーに属すると思われるが、これらのチャネルの活性を制御するメカニズムはほとんどわかっていない(Montell参照)。Bezzeridesらは、近接場対物顕微鏡法、細胞表面ビオチン化、ホールセルパッチクランプ解析を用いて、標識TRPC5を発現するヒト胚性腎293(HEK293)細胞において、上皮成長因子(EGF)での刺激により、TRPC5が細胞膜近傍の小胞から細胞膜へと移行することを示した。著者らは、蛍光標識したAktドメインをホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸のバイオセンサーとして用いて薬理学的解析を行い、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)がTRPC5の移行に関与していることを示した。ドミナントネガティブなRac1変異体がTRPC5の細胞膜への取り込みを阻害したのに対し、恒常的活性型のRac1を微量注入するとTRPC5の取り込みが活性化された。p21-活性化キナーゼ(PAK)の抑制ドメインまたはホスファチジルイノシトール-4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)の変異体のいずれかを発現させた実験により、PIP5KはRac1の下流で作用してTRPC5の移行を仲介するが、PAKは作用しないことが示された。内在性のTRPC5を発現するラット海馬ニューロンの初代培養において、各種成長因子はPI3K依存性の移行を活性化した。さらに、PIP5Kを強制発現させると神経突起の伸長が減少したが、この影響はドミナントネガティブなTRPC5変異体により打ち消された。このように、成長因子はTRPC5の移行の活性化によりカルシウムの流入を促進できる。著者らが提案したこのメカニズムは、カルシウム流入とそれによるカルシウム依存性の細胞形態変化の制御に広く関与している可能性がある。

V. J. Bezzerides, I. S. Ramsey, S. Kotecha, A. Greka, D. E. Clapham, Rapid vesicular translocation and insertion of TRP channels. Nat. Cell Biol. 6, 709-720 (2004).

C. Montell, Exciting trips for TRPs. Nat. Cell Biol. 6, 690-692 (2004).

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