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炎症 過剰な幸運を避ける

INFLAMMATION:
Avoiding Too Much of a Good Thing

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 282, pp. tw162, 3 May 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2822005tw162]

要約 : 転写因子の核内因子κB(NF-κB)は、病原菌や炎症性サイトカインに対する炎症反応の媒介において重要な役割を担っている。炎症性の刺激によって、2つの触媒サブユニットIKKαおよびIKKβを有する複合体IKK(NF-κB阻害因子α(IκBα)キナーゼ)の活性化が起こる。IKKβはIκBαをリン酸化してNK-kBを活性化させるが、IKKαが炎症反応において担っている役割についてはあまり分かっていない。Lawrenceらは、活性化されないIKKαを発現するマウス(IKKαAA/AAマウス)をB群レンサ球菌(Streptococcus)(GBS)に曝露すると、細菌力価はが低下するとともに、奇妙なことに生存率も低下することを突き止めた。大腸菌リポ多糖(LPS)を注射したところ、IKKαAA/AAマウスではNK-κB標的遺伝子の発現が増加し、敗血症ショックに対する感受性が上昇した。野生型マウスの造血系をIKKαAA/AAマウス由来の骨髄で再構成した実験により、この炎症反応の増大は造血系の細胞によるものであることが明らかになった。IKKαAA/AAマウス由来のマクロファージは、GBSにより誘導されるアポトーシスに対して抵抗性であり、LPSに曝露するとin vitro殺菌活性が上昇し、炎症性遺伝子および抗アポトーシス性遺伝子の発現が増加した。NF-κBのDNA結合活性およびNF-κBのサブユニットであるRelAおよびc-Relの核移行は、始めIKKαAA/AAマウスと野生型マウスで同等であったが、IKKαAA/AAマウスでは、標的遺伝子プロモーターとの結合に伴って、RelAおよびc-Relの核内存在量の増加が持続した。また、RelAのリン酸化はIKKαAA/AAマウス由来のマクロファージにおいて低下し、RelAおよびc-Relの半減期は延長した。以上より、IKKβとは対照的に、IKKαの役割は炎症反応を終結することではないかと著者らは提案している。

T. Lawrence, M. Bebien, G. Y. Liu, V. Nizet, M. Karin, IKKα limits macrophage NF-κB activation and contributes to the resolution of inflammation. Nature 434, 1138-1143 (2005). [PubMed]

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