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ERストレス インターフェロン-γはミエリン形成を阻害する

ER STRESS:
Interferon-γInhibits Myelination

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 286, pp. tw202, 31 May 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2862005tw202]

要約 : 中枢神経系(CNS)の軸索を絶縁するミエリンを産生するオリゴデンドロサイトは、タンパク質合成を乱すような条件に対して極めて敏感であり、ある種のヒト髄鞘脱落疾患は、タンパク質合成を担う成分をコードする遺伝子の変異と関連がある。Linらは、インターフェロン-γ(IFN-γ)(T細胞およびナチュラルキラー細胞により産生され、多発性硬化症を始めとする免疫性髄鞘脱落疾患と関連がある)にオリゴデンドロサイトが曝露されると、小胞体(ER)ストレス応答が活性化され、このことが細胞死の一因となる可能性があることを示す証拠を提示している。培養オリゴデンドロサイトは、IFN-γに曝露されるとアポトーシスを起こした。このERストレス応答は、CHOP(転写因子)およびBiP(ERシャペロン)の含有量の増加、真核生物の開始因子2α(eIF-2α)のリン酸化の増加、カスパーゼ-12の活性化として検出された。著者らは、CNSのアストロサイトにおいてIFN-γを誘導的に発現するようにデザインされたトランスジェニックマウスを用い、胚発生時にIFN-γの発現を誘導すると、14日齢のマウスはミエリン形成が不全となった軸索およびERストレス応答活性化の特徴を示すオリゴデンドロサイトを含むことを示した。ERストレスに応じて活性化されてeIF-2αをリン酸化する膵臓ERキナーゼ(PERK)を欠損するマウスとこれらのIFN-γ操作マウスを交配させると、タンパク質合成が低下した。CNSでIFN-γを発現するPERK+/-マウスは、振戦、運動失調、てんかんを示し、CNSにおいてIFN-γを発現する野生型マウスに比べ、より重度のミエリン形成不全の軸索を有していた。さらに、アポトーシス性オリゴデンドロサイトの含有量は、CNSでIFN-γを発現するPERK+/-マウスにおいて高く、オリゴデンドロサイトの総数は少なかった。IFN-γの発現を誘導した成体マウスのオリゴデンドロサイトは、ミエリン形成の低下を示さず、ERストレス応答が幾分活性化した証拠だけがみられた。このことは、成体においてミエリンの維持に必要なタンパク質および脂質合成は少ない一方、発生時のミエリン合成にはより多くの合成が必要とされるためと考えられる。

W. Lin, H. P. Harding, D. Ron, B. Popko, Endoplasmic reticulum stress modulates the response of myelinating oligodendrocytes to the immune cytokine interferon- . J. Cell Biol. 169, 603-612 (2005).

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