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一酸化窒素シグナル伝達:NOはRGSタンパク質の終わりを意味する

NITRIC OXIDE SIGNALING:
NO Spells End for RGS Proteins

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 306, pp. tw362, 18 October 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3062005tw362]

要約 : 多くの生物学的過程は、気体分子である一酸化窒素(NO)の生成量の変化により調節される。とりわけ、NOは心臓機能に対して治療上有益な作用を示す。しかし、NOが細胞機能に影響を与えるメカニズムは完全に理解されているわけではない。Huらは、特定のタンパク質に存在するN末端Cys残基のアルギニン化(アルギニン残基との結合)を、NOが促進するという証拠を示している。こうしたタンパク質の修飾は、ユビキチン依存性の分解の目印になる。このような修飾を受けやすい配列を有する約30種類ほどの哺乳動物のタンパク質のなかには、3つのRGS(Gタンパク質(ヘテロ三量体のグアニンヌクレオチド結合タンパク質)シグナル伝達制御因子)タンパク質がある。アルギニン化を仲介するアルギニルトランスフェラーゼを欠損させたマウス胎児では、これらのタンパク質の量が増加していた。そこで、これらのRGSタンパク質のN末端Cys残基(アルギニン化に必要)の酸化状態の変化が、NOにより仲介されるのではないかと著者らは考えた。実際に、NO濃度を上昇させるような薬剤で処理した細胞では、外来性に発現させたタグ付のRGS4の量は上昇しており、NO濃度を低下させるような薬剤で処理した場合には量は低下していた。こうしたNO依存性のRGS4のアルギニン化は、in vitroにおいても証明された。RGSタンパク質の量を制御することによって、このメカニズムはGタンパク質共役受容体からのシグナル伝達のNOシグナル伝達による調節を可能にしているようである。アルギニントランスフェラーゼを欠損させたマウスは、心血管系の異常により死亡する。NOの心臓への作用を仲介することが知られているメカニズムは他にもあるが、アルギニントランフェラーゼは、NO濃度を増加させるという薬物の既知の有益な作用を再現することが可能なもうひとつの選択的標的を与えるかもしれないと著者らは述べている。

R.-G. Hu, J. Sheng, X. Qi, Z. Xu, T. T. Takahashi, A. Varshavsky, The N-end rule pathway as a nitric oxide sensor controlling the levels of multiple regulators. Nature 437, 981-986 (2005). [PubMed]

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